「Rapsody – Oprah」他、週刊新譜る10(2019/9/5~9/11)

「Rapsody – Oprah」他、週刊新譜る10(2019/9/5~9/11)
 

週刊新譜る10 [2019年9月5日~11日分]

直近7日間にリリースされたアメリカのHipHop/R&Bの新譜や新作ミュージックビデオの中から、”これだけは抑えておきたい10曲”を厳選して紹介している当サイトのメインコーナー。今回は2019年9月5日から11日の間にリリースされたものから選出。

Rapsody – Oprah feat. Leikeli47


ビデオ公開日2019年9月9日
収録タイトル Eve [2019年8月23日リリース]
元ネタ

North Carolina州Snow Hillの女性ラッパー、Rapsodyの新作ミュージックビデオ。New YorkはBrooklynの覆面女性ラッパーLeikeli47を客演に招いた曲。アルバム「Eve」では、全曲それぞれの内容にちなんだ黒人女性の名前を曲名にするという形で構成されており、お金に関する内容をラップした本曲にはOprah Winfrey (TV番組の司会者等を務め、黒人女性としては史上初のビリオンダラー=10臆円を超える資産を築いた人物。)の名が付けられている。展開を持たせた器用なフロウで聴かせる主役、鼻にかかったような声で淡々と突き進むLeikeli47と、シンプルなビート上で繰り広げる癖のあるラップは病み付きに。

Leikeli47の拠点参照: https://www.vice.com/en_us/article/ryzvey/leikeli47-interview-profile-2015

Casanova – So Brooklyn feat. Fabolous


ビデオ公開日2019年9月10日
収録タイトル
元ネタ

New YorkはBrooklynのラッパー、Casanovaの新作ミュージックビデオ。同郷の先輩Fabolousを客演に招いたこの曲は、この地が如何にハードなエリアかを思い出させてくれる。ビデオでは地元の盟友達も多数出演、また現在このビートをジャックし地元についてラップする「# SoBrooklynChallenge」なる動きも起こっており、MainoやPapooseなどのBrooklynのラッパー達に加え他都市のラッパーまでもが参加。各地の“レペゼン合戦”が起こっている。

Kai Bandz – WTF


ビデオ公開日2019年9月9日
収録タイトル
元ネタ

California州Fairfieldのラッパー、Kai Bandzの新作ミュージックビデオ。一聴して分かるベイエリアらしいサウンドではあるが、チカーノか?と思うような独特な声質がかなり印象的。直進性のあるビートを、時よりコケそうな危なっかしいフロウで乗りこなす様は中毒性も高く、今後の動きにも注目したい存在だ。

Danny Brown – Dirty Laundry


ビデオ公開日2019年9月5日
収録タイトルuknowhatimsayin¿ [2019年10月4日リリース予定]
元ネタ”Syrinx – Aurora Spinray [1971年] ”

Michigan州Detroitのラッパー、Danny Brownの新作ミュージックビデオ。彼の異端児ぶりが存分に楽しめる曲で、似たり寄ったりの楽曲・ラッパーが多い昨今のシーンでは重宝されるべき男だろう。ビートを手掛けたのはQ-Tipで、ガチャガチャした元ネタの雰囲気を生かしつつ、キャッチーでまとまりのあるサウンドに仕立てられており、こちらもさすがの腕前。

Meyhem Lauren & DJ Muggs – GT3


ビデオ公開日2019年9月5日
収録タイトルMembers Only [2019年9月6日リリース]
元ネタ

New YorkはQueensのラッパーMeyhem Laurenと、Cypress Hillのメンバーとして知られるLos AngelesのDJ (但し生まれはQueensだ)、DJ Muggsの新作ミュージックビデオ。当然ビートをプロデュースしているのはMuggsで、彼らしい無骨で時代遅れなサウンドが痛快。そこへ乗るLaurenも、飾り気の無い正統派なラップで素晴らしい。本曲は両者のコラボアルバム「Members Only」に収録されたものだが、2017年にもコラボアルバムをリリースしている二人なだけに、相性の良さを感じさせる。

Skyzoo & Pete Rock – Eastern Conference All-Stars feat. Westside Gunn, Conway, Benny The Butcher & Elzhi


音源公開日2019年9月6日
収録タイトルRetropolitan [2019年9月20日リリース予定]
元ネタ

New YorkはBrooklynのラッパーSkyzooと、同市Bronx出身のラッパー/プロデューサーPete Rockの新曲。本曲はリリースを控える両者のコラボアルバム「Retropolitan」に収録される予定で、“It’s All Good”に続く2曲目のシングル。New York州Buffaloの実力派MCs、Westside Gunn、Conway、Benny The Butcheに加え、Michigan州Detroitのラッパーで、あのJ.DillaもいたラップグループSlum Villageのメンバーとしても知られるElzhiを客演に招いた曲。このメンツによるマイクリレーは燻し銀な格好良さがあり、フックを入れずにヴァースが5人分続く構成にも痺れる。

AD – On Da Gang feat. G Perico


ビデオ公開日2019年9月5日
収録タイトルBy the Way 2 [2019年7月12日リリース]
元ネタ

California州Comptonのラッパー、ADの新作ミュージックビデオ。同州Los AngelesからG Pericoを客演に招き、ADの相方であるSorry Jaynariがビートを手掛けた曲。西海岸流儀の中に薄っすらとTrapらしさを感じるビート、独特なメロディアスなフロウを聴かせる主役、甲高い声が強烈なG Pericoと、聴き所が多い良曲。

Mahalia – What You Did feat. Ella Mai


ビデオ公開日2019年9月9日
収録タイトルLove and Compromise [2019年9月6日リリース]
元ネタ ”Cam’ron – Oh Boy feat. Juelz Santana [2002年]” (”Rose Royce – I’m Going Down [1976年]”)

UKのシンガー、Mahaliaの2作目のアルバム(何故か本人はデビューアルバムと言っているようだが・・・?)「Love and Compromise」からの新作ミュージックビデオ。同じくUKからElla Maiを客演に招き、スムースで都会的なサウンドが心地良い曲。しかし最も印象的なのは、Just Blazeが自身の曲で“最もテクニカルなベストワーク”と語ったこともあるヒット曲”Oh Boy”をサンプリングしている点だろう。本曲を手掛けているのは、Ariana GrandeやTory Lanezらのプロデュースで知られる、Pennsylvania州PhiladelphiaのAndrew “Pop” Wansel。UK勢のどこか品があるヴォーカルと、USプロデューサーの“濃ゆいビート”の組み合わせは絶妙な味わい。

Just Blazeインタビュー参照: bmr No.315 (株式会社ブルースインターアクションズ)

TrifeDrew – Jungle feat. Zuse


ビデオ公開日2019年9月5日
収録タイトル
元ネタ

New YorkはBrooklynのラッパー、TrifeDrewの新作ミュージックビデオ。ジャマイカ出身のラッパーZuseを客演に招いた曲。現行西海岸風な音使いを下地にカリブ海らしさを加えたサウンドは新鮮で、メロディアスなフロウ、Afro Popにも通じる点から、大げさに言えば今旬な要素・スタイルを全て詰め込んだような曲とも言える。

Zuse出身地参照: https://www.xxlmag.com/rap-music/the-break/2015/02/break-presents-zuse/

T-Rell – B.O.N


ビデオ公開日2019年9月6日
収録タイトル
元ネタ

Kansas州Topekaのラッパー、T-Rellの新作ミュージックビデオ。以前からラップとシング(それもかなりコッテリ系)の両刀使いで個性を放っていた彼。そのスタイルはかなり独特で、本曲でも、昨今のシーンに非常に多いラップと歌の中間のようなヴォーカルとは明らかに異なる声・フロウを堪能出来る。

週刊新譜る10 [2019年9月5日~11日分] まとめ

今週はNew York勢に面白い楽曲が多く、それらを中心に選出した。しかしそれ以上に興味をそそられたのは”Rapsody – Oprah feat. Leikeli47”で、楽曲のキャッチーさから収録アルバムのコンセプトまでかなり独自性が感じられた。また独自性と言えばDanny Brownも強烈で、こういった”流行のスタイル一辺倒”にならないアーティストがもっと表に出てくるシーンになれば、HipHopは益々面白くなるだろう。

皆さんも気になった曲はあっただろうか?是非新譜のチェックに活用していただきたい。



※※最後に※※
先日の台風15号の影響で、断水・停電等続いている地域の皆様にお見舞い申し上げるとともに、一日も早い復旧をお祈りいたします。
また被害の無い地域に住む我々も、改めて非常時の水、食料、携帯の予備バッテリーなどの備蓄の確認を。地震ばかりに気を取られがちですが、いつどういった形でライフラインが断たれるか分かりません。自分や家族の身を守るのは、行政やボランティアよりも先に「まず自分自身であること」を絶対に念頭に置いておきましょう。