「Eminem – Darkness」他、週刊新譜る10(2020/1/15~2020/1/22)

「Eminem – Darkness」他、週刊新譜る10(2020/1/15~2020/1/22)
 

週刊新譜る10 [2020年1月15日~22日分]

7日間ごとにアメリカのHipHop/R&Bの新譜や新作ミュージックビデオの中から、”これだけは抑えておきたい10曲”を厳選して紹介している当サイトのメインコーナー。今回は2020年1月15日から22日の間にリリースされたもので、Simple10がチェックした主要なリリース54曲の中から選出。

Eminem – Darkness


ビデオ公開日2020年1月16日
収録タイトルMusic to Be Murdered By[2020年1月17日リリース]
元ネタ ”Simon & Garfunkel – The Sounds of Silence [1964年]”

Michigan州Detroitのラッパー、Eminemの新作ミュージックビデオ。事前予告無くリリースされ現在話題の新作アルバム「Music to Be Murdered By」に収録された曲。2017年ラスベガスで起こった銃乱射事件(音楽フェスの会場に隣接するホテルから観客に向け銃が乱射され58人が死亡、その後犯人は客室で自殺するという痛ましい事件)をテーマに、犯行前の犯人の様子・心境をステージに立つ前の自身の心境と重ね、リリックの大部分がこの“闇を抱えたどちらの立場にも読み取れる(=ダブルミーニング)”形で展開される。「父親をあまり知らない」という実際の犯人との共通点や、会場が満員であることを祈るなど現実的な描写が目立つ。後半に進むにつれ実際の犯行時の様子が語られ、犯人側の要素が強くなるが、最後までEm側の視点とも受け取れるあいまいさは残されたままだ。また全体をダブルミーニングとしただけでなく、曲中の随所で細かなダブルミーニングが織り交ぜられているのも彼らしい。(筆者が確認したいくつかの和訳サイトではこの辺りを全て解説し切れてはいなかったため、和訳をチェックする際はご注意を。この注意点については当サイトが提唱するHipHopの理解を深めるためのSimpleな10の掟でも触れています。)
かつての”Mosh”とは違い後付け感はあるものの、ビデオの最後には銃規制のため投票を訴えるシーンもある。




Royce 5’9 – Overcomer feat. Westside Gunn


ビデオ公開日2020年1月17日
収録タイトル
元ネタ

Michigan州Detroitのラッパーで、Eminemが主宰するレーベルShady Recordsに所属し、彼とのデュオBad Meets Evilの片割れとしても知られるRoyce 5’9の新作ミュージックビデオ。レーベルメイトでNew York州Buffaloのラッパー、Westside Gunnを客演に招いた曲。甲高い声が強烈なGunn、いぶし銀なフロウでベテランらしい語り口の主役と両者の個性が楽しめる。特筆すべきは主役による元レーベルメイトYelawolfへのディス部分か。本記事執筆時時点(2020年1月23日)では詳しい理由は明らかにされていないものの、Royce曰く「当事者同士では理由は分かっている」とのこと。断片的に出回っている情報から推測するに、HipHopという文化を食い物にする白人達やそういった傾向にYelawolfが加担しているように感じたためでは無いかと思われる。

The Weeknd – Blinding Lights


ビデオ公開日2020年1月21日
収録タイトル
元ネタ

カナダ出身のシンガー、The Weekndの新作ミュージックビデオ。2019年11月にシングルとして音源はリリースされており、メルセデス・ベンツ社のコマーシャルでも使用されている話題の曲。君しか信用出来ない、今回は君を離さない、といった歌詞であることから交際と破局を繰り返しているモデルBella Hadidを意識しているのではないかとの噂もあるが、それ以上に印象的なのはレトロでエレクトロなサウンド。これは近年“発掘”され世界的にブームになっているシティポップの影響を受けている可能性も否定出来ない。楽曲を手掛けたのは、Max Martin(Britney Spears、Taylor Swift等)、Oscar Holter(Christina Aguilera、Carly Rae Jepsen等)といったポップシーン寄りのベテランプロデューサー達に加え、~各地で進化を続けるTrapに夢中になった1年~Playlist:「The Best of 2016」に選出したラッパーのBelly、そのBellyやThe WeekndをプロデュースしてきたJason Quennevilleと強力な布陣。時代が一回りし、旬な印象を受ける興味深い曲だ。
尚“Sin City”という歌詞が出てくる通りラスベガスを舞台にした本ビデオでは、プレイボーイ誌をはじめ米国で活動する日本人モデル、ハマノミキさんが出演している。

Z-Ro – I’m OK


ビデオ公開日2020年1月20日
収録タイトル
元ネタ

Texas州Houstonのラッパー、Z-Roの新作ミュージックビデオ。ご当地サウンドとも言えるユルくスムースな芸風は、時代と共に洗練さを増している印象を受ける。最後に笑顔で手を振る姿はさすがに違和感が有りすぎるが、この心地良さの前ではそれすらも“OK”か。

Missy Elliott – Why I Still Love You


ビデオ公開日2020年1月16日
収録タイトルIconology [2019年8月23日リリース]
元ネタ

Virginia州Portsmouth出身のラッパー/シンガー、Missy Elliottの新作ミュージックビデオ。離れたくても離れられない男性について歌った曲で、久々のまとまった音源「Iconology」に収録されたもの。ザラ付いた歌声で歌う正統派ソウルが、相変わらず彼女らしくて良い。直近2作のミュージックビデオと一応シリーズ物になっているが、60年代、70年代、80年代の変化が感じられる今回も見応えがある

Charlie Wilson – Forever Valentine


ビデオ公開日2020年1月16日
収録タイトル
元ネタ

Oklahoma州Tulsa出身で、The Gap Bandのヴォーカルだったことでも知られる大御所Charlie Wilsonの新曲リリックビデオ。作曲にはBruno Marsも参加しており、ベテランらしさの中にもどこかフレッシュな空気が感じられる。キャッチーなラブソングで、ヴァレンタイン以外の時期でも楽しめる内容だ。

2 Chainz – Dead Man Walking feat. Future


ビデオ公開日2020年1月17日
収録タイトル
元ネタ

Georgia州College Park出身のラッパー、2 Chainzの新作ミュージックビデオ。同州Atlanta出身のFutureを客演に招いた曲。意外にも共演した回数自体多くない両者だが、本曲は恐らく2016年振りの共演だろう。どこか互いに張り合うような印象もありいつも以上に緊張感が漂う。若手Trapラッパー達には無い安定感と貫禄に痺れる。

Mo3 – Apartment feat. Boosie Badazz & Desi Banks


ビデオ公開日2020年1月16日
収録タイトルOsama [2019年12月13日リリース]
元ネタ

Texas州Dallasのラッパーで、~シーンの大きな変化を感じた1年を振り返る~ Playlist:「The Best of 2018」にも選出したMo3の新作ミュージックビデオ。Louisiana州Baton Rouge出身のBoosie Badazzを客演に招き、ビデオにはコメディアン/俳優のDesi Banksも出演。主役のイナタいコーラス、その空気を壊さずに存在感を放つBoosieと、個性的な両者のまとまり具合が絶妙だ。ローカル臭さも含め病み付きになる。

DJ Hard Hitta – Privacy feat. Scotty & T-Top


ビデオ公開日2020年1月18日
収録タイトル
元ネタ

Texas州HoustonのDJ、DJ Hard Hittaの新作ミュージックビデオ。地元のラッパーScottyと、North Carolina州Fuquay-VarinaのラッパーT-Topを客演に招いた曲。女性シンガーが絡むG-Funkにも通じるサウンドがたまらない。この手の曲はコーラスとビートだけで良曲と判断しがちだが、客演二人のラッパーはバトルMCの名手であるため、フロウの安定感がずば抜けている点もポイント。

Carnage – Hella Neck feat. Tyga, OhGeesy & Takeoff


ビデオ公開日2020年1月15日
収録タイトル
元ネタ

グアテマラ生まれMaryland州Frederick育ちのDJ、Carnageの新作ミュージックビデオ。お馴染みのラッパーTyga、Takeoffに加え、California州Los AngelesのラッパーOhGeesyを客演に招いた曲。西寄りながら、EDM系DJでもあるCarnageらしい破壊力あるビートが強烈。タイプが異なる三者のマイクリレーも良い。

週刊新譜る10 [2020年1月15日~22日分] まとめ

アルバムリリースも多く各所で様々な話題が盛り上がっていた今週。Eminem、Missy Elliott、The Weeknd など個性と実力を併せ持ったトップアーティスト達のミュージックビデオがどれも見応えのある週だった。
またZ-RO、Mo3、DJ Hard HittaといったTexas勢がやはり安定した動きを見せており、この辺りも嬉しいリリースだったと言える。

皆さんも気になった曲はあっただろうか?是非新譜のチェックに活用していただきたい。