HipHop初心者が必ず見ておきたい映画 おすすめTOP5

HipHop初心者が必ず見ておきたい映画 おすすめTOP5
 

初心者は本場のHipHopがピンと来ない・・・?

日本に暮らすHipHop初心者にとって、本場アメリカのHipHopを”視覚的に”捉えることは難しいかも知れません。ミュージックビデオ等で彼らの姿を見ることは可能ですが、曲中で綴られた内容や彼らが身を置く環境は、あまりピンと来ない/イメージが湧かない、という方は少なくないはずです。

そこでここでは、USのHipHopを取り巻く環境が垣間見れるような、或いはHipHop本来のイメージを掴むことが出来るような、初心者なら絶対に見ておきたいおすすめのHipHop映画を管理人が本気で厳選。おすすめ順にランキング形式で紹介していきます。

※記事中の動画は、全て公式販売元がアップしている予告編映像です。



1位 8 Mile

公開年2002年 (日本公開2003年)
サウンドトラック・Music from and Inspired by the Motion Picture 8Mile, More Music From 8Mile
受賞等主題歌「Eminem – Lose yourself」が、2003年第75回アカデミー賞”Best Original Song部門”を受賞、2003年第46回グラミー賞”Best Male Rap Solo Performance部門””Best Rap Song部門”を受賞。

アカデミー賞受賞暦参照: https://oscar.go.com/news/oscar-history/2003-75th-academy-award-winners
グラミー賞受賞暦参照: https://www.grammy.com/grammys/awards/46th-annual-grammy-awards


レジェンドラッパーEminemの自身の体験を元にした半自伝映画(フィクション)です。物語の舞台は1995年の荒廃した街、ミシガン州デトロイト。劣悪な環境を抜け出す唯一の方法=MCバトルで勝利しラッパーとして成功するために、Eminem扮する主人公ジミースミス Jr.(B.ラビット)が奮闘する姿が描かれています。公開当時日本は第二次HipHopブームが起こっていたこともあり、本国アメリカだけでなく国内でも大きな話題となった作品です。

「 L.A.コンフィデンシャル 」などで知られる監督のカーティス・ハンソン曰く、

1995年のデトロイトという街、そしてデトロイトにある文化とその世界をできるだけリアルに描くこと


引用元: 8Mile 映画パンフレット 

が本作の一番の目標だったそうで、また95年という時代に設定した理由については、

ヒップホップがまだ全米に広がっていない時期、つまりまだ爆発する前の、大きなエネルギーを持って膨らんでいった時期だったからなのです

引用元: 8Mile 映画パンフレット 

と、公開に先駆け来日した際の記者会見で語っています。

例えば本作の見所の一つであるMCバトルのシーンでは、野次や声援を送る観客達は、実際にデトロイトで暮らす一般人のエキストラ達。そのため、現地のアンダーグラウンドなクラブの雰囲気が非常にリアルで、フィクションの映画とは言え、日本で行われているラップバトルとは一味違った本場らしさが感じられます。
また、バトルで使用される楽曲や、B.ラビット達の会話に登場するラッパーの名前なども時代設定に忠実に描かれています。

HipHop的な部分に関してはコアな層にも受ける内容でありながら、友情や恋愛など青春映画のような要素も盛り込まれていてHipHopに詳しくない方でも楽しめますので、1位に選出しました。




2位 The Art of Rap (邦題: アート・オブ・ラップ)


公開年2012年 (日本公開2013年)
サウンドトラックSomething From Nothing: The Art of Rap
受賞等

80年代より活動するギャングスタラップの先駆者Ice-Tが、数々の著名なラッパー達にHipHopとの出会いや楽曲への思い等をインタビューしていくドキュメンタリー映画です。本作の国内向けキャッチコピーが「全員、達人」であるように、HipHop創成期から現代に至るまでのレジェンドクラスのラッパー47名が登場し、若き日の思い出を語ったりフリースタイルラップを披露したりと、HipHop/ラップ尽くしの作品です。
「HipHop/ラップとは何なのか?」「どのようにして彼らの言葉が生まれるのか?」という点を、単なる歌唱方法や音楽的な話だけでなく、より文化的な深い視点で知ることが出来ます。物語のある映画ではなく全編に渡りインタビュー形式なのでとにかく内容は濃く、”教則ビデオ”と呼べる程にHipHopへの理解が深まる映画です。


公式サイト 角川書店





3位 Tupac: Resurrection (邦題:
トゥパック:レザレクション )

公開年2003年 (日本公開無し)
サウンドトラックTupac: Resurrection
受賞等2005年第77回アカデミー賞”Academy Award for Best Documentary Feature部門”にノミネート

アカデミー賞ノミネート暦参照: https://www.indiewire.com/2005/01/nominations-announced-for-77th-academy-awards-78428/


1996年に凶弾に倒れ、HipHop史上最も神格化されている存在とも言えるラッパー、2 Pacのドキュメンタリー映画です。彼の生い立ちや思想、成功から死に至るまでの過程について、彼自身の肉声(生前のインタビュー時の音声などを編集したもの)で語られている作品です。そのため、まるで彼が死後に自身の半生を振り返り語っているかのような作風で、まさにResurrection(蘇り)を感じさせます。
彼の身に起こったことや思想を読み解くだけでも、HipHopシーンを取り巻くハードな環境からアメリカが抱える社会的な問題点まで知ることが出来るため、初心者にはややマニアックな作品かも知れませんが、おすすめしたいと思います。
また、2017年には2pacの伝記映画である「All Eyez On Me」が公開され話題になりましたが、彼の母Afeni Shakurが設立した「Amaru Entertainment」からリリースされている本作を観ることをおすすめします。(理由は後述。)





4位 Scarface(邦題: スカーフェイス)

公開年1983年 (国内公開1984年)
サウンドトラックMusic From the Original Motion Picture Soundtrack: Scarface
受賞等1984年ゴールデングローブ賞にて、”Best Performance by an Actor in a Motion Picture – Drama部門”にアル・パチーノが、”Best Supporting Actor – Motion Picture部門”にスティーヴン・バウアーが、”BestPerformanse by an Actor in a Supporting Role in Any Motion Picture部門”にジョルジオ・モロダーがノミネート

ゴールデングローブ賞ノミネート暦参照: https://www.goldenglobes.com/film/scarface


アル・パチーノ扮する主人公トニー・モンタナが、キューバから移民としてアメリカへ入国し、非合法な商売でのし上がっていく姿を描いた有名なギャング映画です。HipHopそのものとは無関係な映画なのですが、USのラッパー達が何より影響を受け、愛して止まない作品ということで選出しました。10年以上前でしょうか、USの音楽チャンネルMTVにてラッパーの自宅を訪ねる「MTV Cribs」という番組がありましたが、多くのラッパーがこの「Scarface」のDVDを所有していて、お気に入りの映画/一家に一枚の映画として紹介(崇拝)していたのを覚えています。
主人公がハングリー精神剥き出しで成り上がり、成功を手にした後に歯車が狂い出す様子は、有る意味2 Pacの人生やストリートのギャングたちの生き方と重なるものがあるのかも知れません。トニー・モンタナのようなふるまいやストーリーはHipHopの歌詞においても良く見られますので、HipHop的な精神を知る上では観ておきたい映画です。





5位 Menace II Society(邦題: ポケットいっぱいの涙)


公開年1993年 (日本公開1994年)
サウンドトラックThe Original Motion Picture Soundtrack:
Menace II Society
受賞等1994年MTV Movie Award”Best Movie部門”受賞、Independent Spirit Award”Best Cinematography”部門受賞

受賞暦参照: https://www.imdb.com/title/tt0107554/awards


舞台はカリフォルニア州ロサンゼルス南部にあるワッツ地区。実際にも治安の悪い地域として知られているこの地で、日々を生き抜くアフリカ系アメリカ人の若者たちの姿を描いた映画です。4位で紹介した「Scarface」を、”よりHipHop的な環境に置き換えた映画”と言えば分かりやすいかも知れません。ギャングスタラップ(=アウトローな生い立ちや体験を綴ったHipHop)の歌詞に出てきそうなシーンや、多くのラッパー達が実体験として語る境遇を、そのまま一本の映画にしたようなストーリーです。そのため本作を観ることで、彼らを取り巻く日常や曲中で言わんとすることがかなりイメージしやすくなるでしょう。
また、公開の前年には「ロサンゼルス暴動」が起こっている時代であり、それに関連する時事的なテーマも見え隠れします。今回紹介した5つの映画の中では、ラッパー達が身を置く環境・日常を最もリアルに感じられる作品と言えます。





まとめ

HipHopに関連する映画/おすすめの映画は多数ありますが、中でも初心者に特におすすめと言える5作品を厳選して紹介してきました。

例えば近年では、伝説的なラップグループN.W.Aの伝記映画「Straight Outta Compton (2015年)」や、前述の2 Pacの伝記映画「All Eyez On Me (2017年)」も話題になりましたが、今回は選出していません。これらの作品は伝記映画とは言え実在する人物は全て俳優が演じていますし、細かく見ると事実とは異なる脚色がされていたり、実際の関係者からも批判が出るなど、初心者には間違った情報になりかねないと判断したためです。
その辺りを踏まえ、「HipHop初心者が本当に観るべき映画はどれだろうか?」と熟慮した結果が今回の5作です。HipHopに詳しくなりたい、この文化の理解を深めたい、そんな初心者の方は是非1位から順に制覇してみてはいかがでしょうか?