~Trapが猛威を振るった1年を振り返る~ Playlist: 「The Best of 2015」

~Trapが猛威を振るった1年を振り返る~ Playlist: 「The Best of 2015」
 

※こちらは旧サイトからの記事を2018年11月27日に再掲載しています。

Simple10が選んだ2015年HipHopの総まとめ!「The Best of 2015」

2015年にリリースされた無料で入手可能な楽曲の中から、シーンの1年を振り返るプレイリストを作成。流し聴きするも良し、気に入った曲のみチェックするも良し、ご自身の端末にダウンロードしていくのも良し。お好みでご活用ください。(すぐ下のYoutube動画がすでに25曲流れるプレイリストになっています。)




今回のプレイリストの選曲基準・ルール

①2015年中にリリースされた、公式による無料ダウンロードが可能な曲/またはMixtapeに収録されている曲で、かつミュージックビデオが存在する曲。(ビデオの公開年は異なる場合もあり。また、リミックスの場合はオリジナルのビデオが存在していれば選出可能とする。)
②2015年に活躍が目立ったアーティストや、同年のシーンを象徴するサウンドを可能な限り選出。
③再生数やDL数ではなく、管理人の好みで選出。
④プレイリストとしての流れも意識した曲順で作成。

※各リンクは、元サイト側による削除等あった場合はご容赦ください。

「The Best of 2015」を一曲ずつ紹介

それでは選出曲を1曲ずつ見ていこう。

Maino – Harder Than Them


ビデオ公開日2015年11月9日
収録タイトルK.O.B. 3
元ネタ

まずNYはBrooklynのラッパーMainoから、文字通りハードなサウンドでスタート。2015年は活発な動きを見せる同地のラッパー達の中でも、特に露出が多かった彼。アトランタ発祥のTrapサウンドが各地に浸透しているが、こちらはベテランらしい余裕を感じさせるNY流Trapだ。



50 Cent – Too Rich


ビデオ公開日2015年12月12日
収録タイトルThe Kanan Tape
元ネタ

同じくNYから、こちらはQueens出身のラッパー50 cent。自己破産したこと、更に「本当は金銭面に余裕があるのでは?」という話も話題になったが、そんな中でこの曲とビデオを公開してくる辺りが50らしい。アトランタのプロデューサーLondon on da Trackによる現行仕様なビート上で、いつもよりやや激し目な主役のフロウが映える。



Juicy J – Tap Back


ビデオ公開日2015年10月1日
収録タイトル100% Juice
元ネタ

前曲の不穏な空気をそのままにTennessee州MemphisのラッパーJuicy Jの一曲。こちらもアトランタのプロデューサー軍団808 MafiaからTM88が手掛けており、旬なTrapを聴かせる。元々Memphis勢はTrapに通じるサウンドやフロウを得意としていることもあり、現行サウンドとの相性が良さそうだ。



Project Pat – What U Talkin’ Bout


ビデオ公開日2015年10月22日
収録タイトルPistol A Scalel
元ネタ

Juicy Jの実兄であるProject Patを続けて。ねちっこい主役のフロウは相変らず中毒性が高いが、一本調子にならないビートの展開もなかなか。手掛けるのはシングル”Twerk It”でも抜群の相性を聴かせた、K.E. on the Track。



Puff Daddy – Workin feat. Big sean & Travis scott



※こちらの曲は公式によるミュージックビデオが公開されていたのですが、本記事再掲示時には非公開となっていたため動画を変更しています。

ビデオ公開日2015年11月24日
収録タイトルMMM
元ネタLes Sins – Bother

2015年は新旧Bad Boy勢が集ったMixtape”MMM”がリリースされ、久々に自身のタイトルを聴かせてくれた大ベテランP.Diddy。ハンドクラップが印象的なこの曲は、元ネタを見事に現行HipHopサウンドに調理したさすがの一曲。シンプルながら、飽きさせない展開に引き込まれる。



Freeway & Scholito – Be Real


ビデオ公開日2015年7月21日
収録タイトルFreemix
元ネタ

Pennsylvania州PhiladelphiaのラッパーFreewayと、同郷のScholito による一曲。”Kid Ink – Be Real feat. DeJ Loaf”をジャックしたものだが、原曲には無い絶妙なローカル臭さが漂う。Freewayの相変わらずな男気溢れるフロウとベテランの貫禄に痺れる。



Jay 305 – Thuggin feat. Joe Moses


ビデオ公開日2015年7月27日
収録タイトルInner City Hero
元ネタ

前曲のビートがDJ Mustardプロデュースだったので、そのままMustrad製を続けて流れを西へ。South Los Angeles(旧South Central)のラッパーJay 305による、現在の西海岸サウンドど真ん中な一曲。黄金期に拘る”ウェッサイ原理主義”も大いに結構だが、アップデートされたご当時サウンドも是非チェックしていただきたい。



Willie Mammuth, Beefy Bankz, Fade RR, SD The Emcee, Jooba Loc, Saggzilla, Sam I am & Duce – Bech City


ビデオ公開日2015年11月5日
収録タイトルBeach City
元ネタ

Snoop Doog主導よる、地元Long Beach勢を集めたMixtapeからこの曲を。渇いたクラップとシンセベースが如何にも西海岸らしいサウンド。HipHopは地域や都市ごとにチェックすることを推奨している当サイトとしても、こういった地元密着型の動きは嬉しい。



LE$ – Dickies & Gold


ビデオ公開日2015年12月31日
収録タイトルSteak x Shrimp 2
元ネタ

一方伝統的な西海岸サウンドに通じる曲を聴かせてくれるのが、Texas州HustonのラッパーLE$。ローライダー向けなスムースさ、ビシャッとしたスネアやブヨブヨしたシンセなど、G-Funkらしい音使いではあるが、Houstonらしい独特なユルさも感じる。地元シーンへの愛情をさり気無く織り交ぜたビデオも好印象だ。



Kirko Bangz – Worry Bout It feat. Fetty Wap


ビデオ公開日2015年9月4日
収録タイトルFalling Up EP
元ネタ

Huston産を続けて、Kirko Bangzを。2015年”Trap Queen”が大ヒットしたFetty Wapが参加した哀愁漂う一曲。HookでFetty Wapが加わり空気が一変する瞬間は、旬な男らしい存在感を放っている。ラップと歌の中間のようなフロウを得意とする両者だが、それぞれのキャラが際立った良曲だ。



Travis Porter – Where Them Dollas At


ビデオ公開日2015年6月16日
収録タイトル3 Live Krew
元ネタ

前曲のユルさで一息ついたら、気を取り直して現行シーンの中心地Georgia州Atlantaへ。この地で結成された三人組ラップグループTravis Porterによる王道なTrapソング。小気味良いビートはまさにTwerk向けな一曲。



Migos – Pipe It Up


ビデオ公開日2015年8月3日
収録タイトルStreets On Lock 4
元ネタ

Atlanta産を続けて、2015年デビューアルバムをリリースしたMigos。こちらはMixtape”Streets On Lock 4″に2 Chainz とYoung Jeezyが加わったRemixバージョンが 収録されていたため、選出。(本記事のミュージックビデオはオリジナルバージョン。)近年のTrapブームの興りと同時期に、その発祥の地から頭角を現してきたグループということで、決して見過ごせない存在だ。



Dave East – No Coachella For Me


ビデオ公開日2015年5月29日
収録タイトルHate Me Now
元ネタ

Hookが印象的な曲を続けて、New YorkはHarlem出身のラッパーDave East。BPMやフロウはTrap寄りだが、全体のサウンドはNYらしいこの曲で、アトランタ寄りの流れを一変させ中盤へ。2014年よりNasのレーベルMass Appealと契約している彼、今後の動きに注目したい。



Maino – PNP feat. Chinx


ビデオ公開日2015年12月22日
収録タイトルK.O.B. 3
元ネタMACINTOSH PLUS – リサフランク420 / 現代のコンピュー(Diana Ross – It’s Your move)

同じくNYの、こちらはBrooklynのラッパーMainoを再び。昨年凶弾に倒れたChinxとの共演曲。”MACINTOSH PLUS – リサフランク420 / 現代のコンピュー)”をサンプリングした、黄昏時に聴きたくなるようなメロウな一曲。



Rick Ross – Geechi Liberace


ビデオ公開日2015年10月1日
収録タイトルBlack Dollar
元ネタ

前曲のメロウさを引き継ぎ、Florida州Carol City出身のラッパーRick Rossのこの曲を。ガツガツしすぎない余裕のあるフロウは、Miamiのボスらしさを漂わせる。優雅な雰囲気のビデオも見応えあり。



Busta Rhymes – God’s Plan feat. J Doe & OT Genasis


ビデオ公開日2015年12月25日
収録タイトルThe Return Of The Dragon
元ネタ

しっとりとした曲が続いたところで、Brooklyn出身の大ベテランBusta Rhymesで心拍数アップ。この曲が収録された”The Return Of The Dragon”は彼自身久々のリリースだったが、今最も勢いのあるプロデューサーの一人Jahlil Beatsによるビートすら、主役のキャラクター一色に。客演陣との温度差もメリハリがあり、中毒性の高い一曲だ。



Snyp Life – The Solution


ビデオ公開日2015年4月7日
収録タイトルNY 90’s
元ネタCamilo Sesto – Triste Final

NYはYonkersのラッパーで、同郷のラップグループThe Lox率いるD-Blockの一員Snyp Life。収録作のタイトルからも分かる通り、The Lox周辺のラッパーらしい伝統的なNYスタイルを貫くサウンドが嬉しい。この曲だけでなくMixtapeごと是非チェックしていただきたい。



Troy Ave – Restore The Feeling (NYC)


ビデオ公開日2015年4月7日
収録タイトルWhite Christmas 3
元ネタ

そんなD-Blockを始め数々のNY~現行シーンのラッパーの名が登場するこの曲を。2015年も活発な動きを見せてくれたBrooklynのラッパーTroy Ave。どこか頼りない声でありながらも安定感のあるフロウは絶妙で、タレント揃いのこの地では特に注目したい存在だ。



Skyzoo – Luxury feat. Westside Gunn


ビデオ公開日2015年6月24日
収録タイトルMusic For My Friends
元ネタBola Sete – Bettina

同じくBrooklynから、Skyzooを。主役の燻し銀なフロウと、それを引き立てるWestside Gunnの甲高い声が上手く作用し、独特な渋さで聴かせる。この曲は昨年6月にリリースされたアルバム”Music For My Friends”に収録されているが、執筆時の時点ではシングルとして公式による無料ダウンロードが可能だ。(ダウンロードページへ



Maino – Love My Niggas feat. Vado & Uncle Murda


ビデオ公開日2015年9月7日
収録タイトルK.O.B. 3
元ネタ

NY勢が続いた流れの締めくくりは、本プレイリスト3度目の登場となるMaino。1曲目同様、NY流Trapとも言える現行仕様のビートを、客演陣と共に難なく乗りこなす。昨今はアトランタに注目しがちだが、ラッパーの層の厚さでは現在のBrooklyn及びNY勢もなかなか。



Jeezy – Streetz


ビデオ公開日2015年11月4日
収録タイトルPolitically Correct EP
元ネタ

AtlantaのラッパーJeezyによる哀愁漂うこの曲で、徐々に終盤へ。Trapブーム以前から全国区的な活躍をしているだけに、若手にはないベテランらしい語り口で聴かせる。少し時代を遡ったようなアトランタサウンドが彼のキャリアを感じさせ、より説得力を持たせている。



K Camp – 1Hunnid feat. Fetty Wap


ビデオ公開日2015年10月30日
収録タイトルOne Way
元ネタ

同じくAtlantaから、ユルいTrapサウンドを得意とするK Camp。音数の少ないビート上を、力を抜きつつも器用に乗りこなす主役のフロウは、心地良い脱力感を誘う。途中、そんなユルさを吹き飛ばすFetty Wapの存在感も良いアクセントに。



Kehlani – FWU


ビデオ公開日2014年11月3日
収録タイトルCloud 19
元ネタ

この辺りで歌モノを。California州Oakland出身のR&BシンガーKehlani。こちらの曲は2014年にリリースされたデビューMixtape””Cloud 19″に収録され、同年ビデオも公開されていたが、シングルとしては2015年にリリースされたもの。(厳密には今回の選考基準に該当しているとは言えないが、昨年一気に知名度を上げてきたシンガーなので大目に見ていただきたい。)Jhené Aikoをストリート寄りに仕立てたような独特の歌声・サウンドは、今後大きく飛躍しそうな注目株だ。



Trey Songz – Blessed


ビデオ公開日2016年1月5日
収録タイトルTo Whom It May Concern
元ネタ

Virginia州Petersburg出身のR&BシンガーTrey Songz。Trapの上でラップのようなフロウを織り交ぜた、現行R&Bらしい一曲。ゆったりとしつつも甘過ぎないこの曲で、いよいよ本プレイリストのラストへ。



K Camp – Comfortable


ビデオ公開日2016年1月5日
収録タイトルYou Welcome
元ネタ

最後はもう一度K Camp。締めくくりにぴったりな爽やかでスムースなこの曲を。尚ビデオはオリジナルバージョンだが、Mixtapeには50CentとAkonが参加したRemixバージョンが収録されている。



2015年のシーンを総括!アトランタ発祥のサウンド”Trap”がいよいよ全国的な主流へ

全25曲紹介してきたが、いかがだっただろうか。2015年は、DJ MustardやNic Nacといった近年ヒットを連発していたプロデューサーの動きが落ち着き、アトランタ発祥のTrapがシーン全体の主流のサウンドになりつつあった。NYや西海岸など、それぞれの土地らしいサウンドを押し出す楽曲もあったが、そういったご当地感の強い地域でも、Trapのビートや音使いを取り入れる動きがかつて無い程に見られた年だったと思う。今後Trapブームが更なる盛り上がりを見せるのか、或いは新たなサウンドが生まれ台頭していくのか、シーンの行方が非常に楽しみに感じられる一年だった。

今回のプレイリスト、是非活用していただきたい。