「Rob Markman – Death Around the Corner」他、週刊新譜る10(2020/4/8~4/15)

「Rob Markman – Death Around the Corner」他、週刊新譜る10(2020/4/8~4/15)
 

週刊新譜る10 [2020年4月8日~15日分]

7日間ごとにアメリカのHipHop/R&Bの新譜・新作ミュージックビデオの中から”これだけは抑えておきたい10曲”を厳選し、ランキング形式で紹介している当サイトのメインコーナー。 今回は2020年4月8日から15日の間にリリースされたもので、Simple10がチェックした主要なリリース88曲の中から選出。

10位 Eastside Jody – Ain’t Sellin My Soul


ビデオ公開日2020年4月9日
収録タイトル
元ネタ

Georgia州Decaturのラッパー、Eastside Jodyの新作ミュージックビデオ。この地のラッパーにしては珍しく東海岸勢のような、それも何となくJay-Zを彷彿とさせるラップを聴かせていた男だが、今回は一層Jay-Zっぽさが増した印象だ。ビートも2000年を過ぎた辺りのAtlanta勢を聴いているようで、懐かしい南部感が味わえる。

9位 Peewee Longway – Judo


ビデオ公開日2020年4月9日
収録タイトルLong Money [2019年10月4日リリース]
元ネタ

Georgia州Atlantaのラッパー、Peewee Longwayの新作ミュージックビデオ。曲名のJudoというのはお察しの通りの比喩。際どいリリックも、そのキャラクターとサウンドのお陰で不快感無く楽しめる。日本風?なセットで美女達と戯れるシーンも良い。

8位 Mozzy – Pricetag feat. Polo G & Lil Poppa


ビデオ公開日2020年4月8日
収録タイトルBeyond Bulletproof [2020年5月1日リリース予定]
元ネタ

California州Sacramentoのラッパー、Mozzyの新作ミュージックビデオ。Illinois州ChicagoからPolo Gを、Florida州JacksonvilleからLil Poppaを客演に招いた曲。主役はLil Poppaとは既に共演しているが、恐らくPolo Gとは初共演。Trapにベイエリア風味を加えたようなサウンドはこの三者には絶妙で、明らかにスタイルが異なるであろう主役と客演陣だが上手くまとまっている。

7位 Too $hort – Pull Up feat. Trae Tha Truth


ビデオ公開日2020年4月16日
収録タイトル
元ネタ

California州Oaklandのベテラン、Too $hortの新曲ビデオ。Texas州HoustonのラッパーTrae Tha Truthを客演に招いた曲。ビートを手掛けているのは、“Megan Thee Stallion – B.I.T.C.H”などもプロデュースしているMichigan州DetroitのHelluva Beats。そのため本来のベイエイアっぽさはやや物足りないが、代わりにTraeがキレキレ。暗闇に引きずり込まれるようなドス黒いラップは、スピード感のあるビートと相性抜群。

6位 50 Cent – Tryna F*ck Me Over feat. Post Malone


ビデオ公開日2020年4月14日
収録タイトルThe Kanan Tape [2015年]
元ネタ “Buddy Baker – Sign Song [1971年]”

New York市Queens出身のラッパー、50Centの新作ミュージックビデオ。この“The Beatnuts – Off The Books”と同じネタを使った曲どこかで聴き覚えがあると思ったら、2015年にリリースされたミックステープ「The Kanan Tape」に収録されていたもの。ブーム真っ只中のTrapを取り入れた同作の中でも異色を放っていた曲だけに、今聴いても十分楽しめる。

5位 Pink Sweat$ – Ride With Me


ビデオ公開日2020年4月10日
収録タイトル
元ネタ

Pennsylvania州Philadelphiaのシンガー、Pink Sweat$の新曲ビデオ。ヴァースの垢抜けないメロから徐々に視界が開けていき、コーラスで一気に爽快感に包まれる展開が素晴らしい。どこか懐かしさのあるディスコサウンド、彼のイメージカラーのピンク、そしてこの爽やかさと来れば今の時期にはぴったり。外出出来ない分、スピーカーの前で春を感じていただきたい。

4位 Ari Lennox – BUSSIT


ビデオ公開日2020年4月8日
収録タイトルRevenge of the Dreamers III: Director’s Cut [2020年1月16日リリース]
元ネタ

Washington, D.C.のシンガーで、J.Coleが主宰するレーベル「Dreamville」に所属する Ari Lennoxの新作ミュージックビデオ。同レーベルのコンピ「Revenge of the Dreamers III: Director’s Cut」に収録されていた曲。恋人、と言うよりはこれから関係が深まっていきそうな彼へ愛を囁く内容で、その歌声と相まって何とも妖艶な世界が広がる。前回選出した”Kiana Ledé – Chocolate. feat. Ari Lennox”同様、甘ったるくも決して胸焼けはしない美味しいサウンド。

3位 Snoop Dogg – I C Your Bullsh*t


ビデオ公開日2020年4月11日
収録タイトルI Wanna Thank Me [2019年8月16日リリース]
元ネタ“Herbie Hancock – Rockit [1983年]”

California州Long Beachのベテラン、Snoop Doggの新作ミュージックビデオ。Herbie Hancockの楽曲の中では最もHipHopファンに馴染み深いはずのあの“Rockit”がサンプリングされたビート、Bullsh*tな人間に向けられた皮肉たっぷりのリリック、内容通りに進むのかと思いきや訳が分からな過ぎるビデオと、興味を惹かれる要素が満載。サウンド的には好き嫌いが分かれるだろうが、このユルさとおふざけ感あってこそSnoopだろう。ユピヨウユピエイな犬や2pacとの映像など、思い出深いシーンはもっと真面目な場面で使って欲しい気もするが、その辺も彼らしいか。

2位 D Smoke & Snoop Dogg – Gaspar Yanga


ビデオ公開日2020年4月14日
収録タイトルBlack Habits [2020年2月7日リリース]
元ネタ“Koutev Bulgarian – National EnsembleBre, Petrunko [1991年]”

California州Inglewoodのラッパー、D Smokeの新作ミュージックビデオ。曲名の「Gaspar Yanga」というのは16世紀に実在したアフリカ人で、当時スペインが統治するメキシコで奴隷として雇われていた人物。この方は奴隷仲間を率いて反乱を起こし支配者の元から逃亡、その後送り込まれたスペイン軍と戦い、最終的に自陣の要求を受け入れさせることに成功。植民地支配者相手に勝利をおさめた数少ない例ということで、メキシコでは英雄的な存在だそう。本曲のリリックはそういった精神が反映された内容と言え、ビデオの方も襲撃を受けたSmokeがSnoopに鼓舞されきっちりやり返すストーリーが痛快だ。




1位 Rob Markman – Death Around the Corner feat. Trizz & DviousMindz




1位 Rob Markman – Death Around the Corner feat. Trizz & DviousMindz


ビデオ公開日2020年4月14日
収録タイトル
元ネタ

New York市Brooklynのラッパーで、大手HipHop情報サイト「Genius」の運営にも携わるRob Markmanの新曲。2pacと同じ曲名であること以上に、今時珍しいピーヒャラシンセが這い回るG-Funkビートに驚く。手掛けたのはこれまでも起用されることが多かったプロデューサーDviousMindZ。California州Los AngelesのラッパーTrizzを客演に招き、完全に西海岸を意識した曲と言える(そもそもRobとTrizzが出会ったのがL.A.だったようだ)。主役はHipHop関連のジャーナリストでもあることも影響しているのか、かなり真面目な姿勢でこの文化と向き合っているようで、その辺りのスタンスは本曲のリリックからも読み取ることが出来る。「死を迎える前に目的を果たせ」、そんなメッセージをこの不穏なサウンド上で語られると妙な生々しさがある。

Genius公式URL: https://genius.com/

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週刊新譜る10 [2020年4月8日~15日分] まとめ

今週Simple 10がチェックした主要アーティストのリリース曲は88曲。ずば抜けてキャッチーな曲はそれ程無かったが、その分全体の平均点が高い週だったように思う。中でもRob Markmanは、時代遅れだろうが決して忘れてはいけないHipHopを再度提示してくれたように感じた。NY勢だけでなく、西海岸勢にもこうした原点回帰的な動きが広まるとシーンは一層面白くなるはずだ。

皆さんも気になった曲はあっただろうか?是非新譜のチェックに活用していただきたい。