~各地で進化を続けるTrapに夢中になった1年~Playlist:「The Best of 2016」

~各地で進化を続けるTrapに夢中になった1年~Playlist:「The Best of  2016」
 

※こちらは旧サイトからの記事を2018年11月20日に再掲載しています。

Simple 10が選んだ「The Best of 2016」

2016年にリリースされた無料で入手可能な楽曲の中から、シーンの1年を振り返るプレイリストを作成。流し聴きするも良し、気に入った曲のみチェックするも良し、ご自身の端末にダウンロードしていくのも良し。お好みでご活用ください。(すぐ下のYoutube動画がすでに25曲流れるプレイリストになっています。)




今回のプレイリストの選曲基準・ルール

①2016年中にリリースされたMixtapeに収録されている曲で、かつミュージックビデオが存在する曲。(ビデオの公開年は異なる場合もあり。)
②2016年に活躍が目立ったアーティストや、同年のシーンを象徴するサウンドを可能な限り選出。
③再生数やDL数ではなく、管理人の好みで選出。
④プレイリストとしての流れも意識した曲順で作成。

※各リンクは、元サイト側による削除等あった場合はご容赦ください。

「The Best of 2016」を一曲ずつ紹介

それでは選出曲を1曲ずつ見ていこう。

Project Pat – 30 feat. Young MA, Coca Vango, Big Trill


ビデオ公開日2016年11月15日
収録タイトルStreet God 4
元ネタ

まずはTennessee州MemphisのラッパーProject Patのこの曲で、飛ばし過ぎないスタート。2016年は自身のMixtapeシリーズ”Street God”を3作リリースし、活発な動きを見せてくれた彼。”Ooouuu”で一気に注目を集めたYoung MAらを招いた、中毒性の高い一曲。



O.T. Genasis – Weigh The Weight


ビデオ公開日2016年11月21日
収録タイトルCoke-N-Butter
元ネタ

続いてダークな空気はそのままに、ここ2、3年ヒットが目立つ O.T. Genasis を。カナダ出身の若手プロデューサーBricksOnDaBeatの手腕が光るTrapチューン。現行シーンらしいサウンドとビデオは、迷う余地無く今回のプレイリストに選出。



2 Chainz – Diamonds Talkin Back


ビデオ公開日2016年11月16日
収録タイトルHibachi For Lunch
元ネタ

こちらも昨年露出の多かった、Georgia州College Park出身のラッパー2 Chainz。そろそろ温まってきた3曲目にこの曲を。浮世絵風のジャケットに”火鉢”というタイトル、日本人なら取り敢えず反応してしまうであろうMixtape”Hibachi For Lunch”からの一曲。



Future – Screwed Up


ビデオ公開日2013年4月14日
収録タイトルWicked
元ネタ

Georgia繋がりで、Atlantaから Futureのこの曲を。とは言え恐らく正式にはTrae Tha Truth によるFutuerを招いた曲で、2013年にはビデオが公開されているもの。(本プレイリストは収録Mixtapeを基準にしているので、そちらでのクレジット通りに表記。)曲名やビデオからも分かる通りTreaの地元Houstonらしさ満点なのがファンには嬉しいが、 心拍数が上がってきそうな緊張感あるビートを手掛けたMike Will Made Itもお見事。



Trae tha Truth – Slant feat. Jay’ton, Lil Boss


ビデオ公開日2016年7月18日
収録タイトルAnother 48 Hours
元ネタ

そのままTrae tha Truthの曲を続けて。前曲で上がった心拍数をHouston産らしいユルさでクールダウン。しかし気だるさに包まれながらも、不穏さは持続。



Kodak Black – Can I


ビデオ公開日2016年9月28日
収録タイトルLil Big Pac
元ネタ

2016年に人気急上昇したラッパーの一人、 Florida州Pompano Beach出身のKodak Black。二度逮捕される等、色々な意味で注目された一年だった彼。ユルくイナタイでサウンドで、前半からの流れに一息。



2 Chainz – MF’N Right


ビデオ公開日2016年6月24日
収録タイトルFelt Like Cappin
元ネタYoung Dolph – Preach

ここからは、再び2 Chainzで現行サウンド真っ只中へ。AtlantaのTrapシーンを語る上では欠かせないプロデューサーMike Will Made ItとZaytovenが手掛け、Lil Wayneまで加わった豪華な一曲。「Preach」のあの印象的な笛のような上ネタが使われているため元ネタとして記載しているが、原曲もZaytovenプロデュースであるため、サンプリングではなく弾き直しや流用の可能性もあり。



Young Buck – Back To The Old Me


ビデオ公開日2016年7月11日
収録タイトル10 Bodies
元ネタ

Tennessee州Nashville出身、G-Unitの一員でお馴染みのYoung Buck。決して器用とは言えない荒々しいフロウは、マイナーなギャングスタラップ諸作品にも通じるローカル臭さを感じさせる。南部産ヒップホップは”ダーティサウス”と呼ばれて久しいが、まさにこの曲こそが”ダーティサウス”だ。



Maino & Uncle Murda – WorldStar


ビデオ公開日2016年7月2日
収録タイトルYellow Tape King Kong & Godzilla
元ネタTavares – Out Of The Picture

続いてNYはBrooklynから、MainoとUncle Murdaによるコラボ。「50Cent – Many Men」と同じネタを使ったこの曲で、一度流れを東へ。DJ Boy Wondaが手掛け完全にNY勢で固めている曲なだけに、BPMやビートは現行のTrapらしいものの、本家アトランタのそれとは明らかに異なるサウンドが興味深い。



G-Unit – Its a Stick Up feat. Lloyd Banks, Tony Yayo, Kidd Kidd & Young Buck


ビデオ公開日2016年8月30日
収録タイトルThe Lost Flash Drive
元ネタ

Young Buck、50 Centの同ネタと続いたところでG-Unitを。まだまだアトランタ系のサウンドが根強い現行シーンではあるが、昨年はNY勢を中心に”脱Trapサウンド”の流れも少しずつ見られるようになってきた。となると、こういったベテラン勢による動きも活発になってくるはずだ。



Snyp Life – Welcome To NY feat Styles P, Nino Man, Dave East


ビデオ公開日2015年9月29日
収録タイトルBest Of Bookie Barz
元ネタ

NYのもう一つのベテランクルーD-Blockから、Snyp Life(ミュージックビデオは Styles P 名義だが)のこの曲で、より一層NYらしいサウンドへ。相変わらずコアなNYスタイルを貫いているD-Block近辺だが、昨年はThe LoxがJay-ZのレーベルRoc Nationと契約し新作アルバムをリリースしたばかり。2017年も活発な動きに期待したい。



Belly – Trap Phone feat. Jadakiss


ビデオ公開日2016年12月14日
収録タイトルInzombia
元ネタ

その The Lox の一員 Jadakiss を客演に招いたBelly。古びたオルゴールのような何とも言えない哀愁が漂うが、パレスチナ生まれ/カナダ育ちと言うUSラッパーとは異なるバックボーンがサウンド面に現れているようにも思える。彼もまた2015年にRoc Naitonと契約しているが、Juicy JからJadakissまで共演する一方でThe Weekndのソングライィングを手掛けるなど、やはり独特な立ち位置を築いていきそうだ。



Troy Ave – No Delay


ビデオ公開日2016年12月26日
収録タイトルWhite Christmas 4
元ネタ

さて、NY勢が続いた流れの最後はBrooklynのラッパーTroy Ave。2016年5月にはT.I.のライブ会場で起こった発砲事件に関与した疑いで逮捕され、その際自身も被弾。 その後保釈中の身であったが、12月25日に再び何者かに撃たれ病院へと搬送。悪いニュースが続いているものの、音楽面では3作のMixtapeをリリースするなど、役者揃いのBrooklyn勢の中ではかなり存在感を放った一年だった。

Chevy Woods – Gang Shit Only


ビデオ公開日2016年12月22日
収録タイトルGang Shit Only
元ネタ

ここから再び現行サウンドらしい流れに。Pennsylvania州Pittsburghのラッパーで、同郷のWiz Khalifa率いるTaylor GangのメンバーでもあるChevy Woods。地味ながらもハードさと流行を抑えたバランスのいい良曲。



Project Pat – Catching Juggs


ビデオ公開日2016年4月29日
収録タイトルStreet God 2
元ネタ

ここでもう一度Project Pat。ドロっとしたダークさと、リッチでリゾート風なビデオはマフ○アのボスキャラ的なカッコ良さ。今やシーンを引率するプロデューサー軍団となった808Mafiaから、TM88が手掛けたサウンドも熟練の域。



Juicy J – Green Carpet


ビデオ公開日2016年9月20日
収録タイトルLit In Ceylon
元ネタ

Project Patの弟であるJuicy Jを続けて。この曲もTM88が手掛けており、メンフィスらしいダークな南部感とアトランタ産Trapとの好相性ぶりが伺える。Juicy Jも多数のミュージックビデオを公開し、露出の多い一年だった。



Tone Tone – Gold Rolex feat. Gucci Mane


ビデオ公開日2016年5月12日
収録タイトル11627 Gangsta Grillz
元ネタ

808Mafiaが手掛けた曲を更に続けて。こちらは同軍団からDYが手掛けた、DetroitのラッパーTone Toneの曲。昨年ようやくお務めを終え本格的な活動を再開したGucci Maneも参加しているため、アトランタのラッパーかと思うようなサウンド。主役の特徴的な声は存在感抜群だ。



2 Chainz – Lil Baby feat. Ty Dolla $ign


ビデオ公開日2016年11月29日
収録タイトルHibachi For Lunch
元ネタ

本プレイリストでは三度目の登場となる2 Chainz。哀愁たっぷりなこの曲で、Trapが続いた流れに一区切りTy Dolla $ignのhookが沁みる。



Nipsey Hussle – Ocean Views


ビデオ公開日2016年10月3日
収録タイトルSlauson Boy 2
元ネタ

南/東だけではなく、西海岸勢もしっかりと選出。前曲の余韻を残しながら、Los AngelesはCrenshawのラッパーNipsey Hussleで、西へ流れを展開。808系ドラムサウンドで溢れる現状だからこそ、こういった生音系ドラムのビートは新鮮さがある。



YG – I’m A Thug Pt.2


ビデオ公開日2016年11月25日
収録タイトルRed Friday(現在フリーのMixtapeとしては削除されています。)
元ネタ

現在もっとも西海岸らしいサウンドを聴かせるCompton出身のラッパー、YG。2016年にリリースした二作目となるアルバム”Still Brazy”は前作程のヒットとはいかなかったが、メジャーにおいて西海岸サウンドを貫く姿勢は貴重な存在だ。東、南、西、それぞれサウンドに特徴があるUSシーンはやはり面白い。



Nipsey Hussle – Question #1 feat. Snoop Dogg


ビデオ公開日2016年7月4日
収録タイトルSlauson Boy 2
元ネタ

再びNipsey Hussle。Snoop Doggを招き、シンセベース、高音シンセリードが強烈なこちらも、文句無しの西海岸サウンド。彼らのHoodに迷い込んだような不穏な空気は、色々な意味で真っ青になりそうだ。



Wale – Gangsta Boogie feat. Tha Dogg Pound


ビデオ公開日2016年8月18日
収録タイトルSummer On Sunset
元ネタChicago Gangsters – Gangster Boogie

Washington, D.C.出身のラッパーWaleのこの曲を西モノの流れで選出。正式にはTha Dogg Pound名義と思われ、「Chicago Gangsters – Gangster Boogie」のフレーズをそのまま取り入れたスムースなサウンドは、完全にDPG仕様。この辺りから終盤へ向けた流れへ。



Cashflow Harlem – Want my Love Back feat. Cardi B

ビデオ公開日2016年12月22日
収録タイトル Rich Thoughts Poor Habits
元ネタ

その名の通りNYはHarlemのラッパーCashflow Harlemのスムースな曲を続けて。現行サウンドらしいドラム使いではあるものの、シンガーを絡めたキャッチーな雰囲気は2000年前後に良く聴かれたサウンドを彷彿とさせる。

(※再掲にあたり2018年追記※

客演しているのはあのCardi Bで、本記事は「Bodak Yellow」以前という、日本では比較的早い段階で彼女が参加している曲を取り上げた方かと思います。この頃は彼女もMixtapeをリリースしていましたが、その内容を聴く限り、正直現在知られているような存在にまで昇り詰めるとは思っていませんでした。SNSで話題となりTV番組シリーズへの出演~メジャー契約と既に人気を獲得する下地は出来つつあったように思えますが、当時の日本でそういった動きも含め彼女を追っているメディアはほとんど無かったでしょう。当サイトには「Simple 10注目のアーティスト」というカテゴリーがありますが、この中からも近い将来急成長を遂げるアーティストが出てくるのか楽しみです。)



Dej Loaf – Goals


ビデオ公開日2016年6月15日
収録タイトルAll Jokes Aside
元ネタ

Michigan州Detroitの女性ラッパーDej Loaf。2014年頃人気に火が着き、客演に引っ張りだこだった2015年を経て、気付けばあっという間に中堅ラッパーの仲間入り。しっとりとしたこの曲で、プレイリストの”ゴール”へ向けクールダウン。



Lil Durk – Rich Forever feat. YFN Lucci


ビデオ公開日2016年11月28日
収録タイトルThey Forgot
元ネタ

最後を飾るのはIllinois州Chicago出身のラッパーLil Durk。2016年は、前年にリリースしたデビューアルバム”Remember My Name”がゴールドディスクに認定され、またアルバムとMixtapeをリリースするなど順調にキャリアを築いている印象だった。この曲でしっとりと〆。



2016年のHipHopを総括!広がりを見せるTrapブーム以降のシーン

全25曲紹介してきたが、いかがだっただろうか。2016年は、アトランタから広まったTrapが全米各地により一層浸透し、様々なプロデューサーによる独自に解釈された同サウンドが広がりを見せたように思えた。一方で、一時期見られたような「アトランタ勢ばかり」といった状況も過渡期を迎えたようで、伝統的なNYサウンド、DJマスタード以降の西海岸サウンド、などTrap以外の楽曲も再び増えてきた印象があり、非常に楽しい1年だった。
今回のプレイリスト、是非活用していただきたい。