「Ransom」が突如チャートインし話題の16歳、Lil Teccaとは?

「Ransom」が突如チャートインし話題の16歳、Lil Teccaとは?
 

かつてとある国内音楽メディアにて、「日本でまだどのメディアも取り上げていないHipHop/R&Bアーティストの紹介記事」を担当していた筆者(=管理人)。例えばDon Qや、Ann Marie(UKのポップシンガーではなくシカゴのR&Bシンガー)、また当サイト内においても”Bodak Yellow”以前のCardi B客演曲などを紹介したこともあった。

常に「この先活躍しそうだな」というアーティストは可能な限りどこよりも早く皆様にお伝えしたいと考えているが、予想以上に早く話題になり始めたラッパーがいる。Lil Teccaだ。(読み方はリル・テカ、より日本語的に言えばリル・テッカ。)

少なくともTwitterと他サイトやブログを調べた限りでは、彼を取り上げた日本語での投稿は当サイトの”「Lil Tecca – Did it Again」他、週刊新譜る10(2019/2/27~3/6)”が最も古い。彼に対しては「情報がない」との声も見られる。「これは私の役目だろう」、と勝手な義務感(?)に駆られたこともあり、今回はこのLil Teccaについて紹介していく。




彼の人気が急上昇したきっかけは、2019年6月4日にリリースされたシングル(ミュージックビデオは先行して5月に公開)「Ransom」だった。同曲は、翌週の全米シングルチャートBillboard Hot100にて初登場93位にランクイン。その後じわじわと動きを見せ、本記事執筆時では26位まで順位を上げている。リリックは、高級車やハイブランド、女を手に入れ、ヘイターを牽制するよくあるボーストもの。ただしその声とメロディアスなフロウは個性的で、伏せ目がちでありながらも独特なキャッチーさを放つサウンドは聴き手を引き込む。
これより少し前に、Soundcloudチャートにてシングル“Molly Girl”が1位を獲得するなど予兆はあったとは言え、この急激なヒットは快挙と言えるだろう。

Billboard Hot100初登場での順位参照:
https://www.billboard.com/charts/hot-100/2019-06-15

本記事執筆時での Billboard Hot100 順位参照: https://www.billboard.com/charts/hot-100/2019-07-20




New YorkはQueens出身のTecca。現在16歳、確かにミュージックビデオで確認出来るその外見や動きからは若干初々しさが漂う。学生ではあるが、音楽活動が順調なせいか、また彼自身かなり内向的なタイプなこともあってか、通学から自宅にて学業に励むスタイルに変え生活を送っているようだ。ラップは9歳の頃、人気ゲーム機Xboxのプレイを通じて知り合った友人と冗談でディストラックを作りあったことから始めたそうで、何とも現代っ子らしい。
しかし本格的に活動を始めたのは2018年に公開した“No More”からと思われ、この時点ですでに現在のようなラップスタイルに行き着いていたことも確認出来る。




Queens育ちでありながら、影響を受けたアーティストは意外にもChief KeefやLil Reeseなどのシカゴのラッパー達と言う彼。その辺りからも現代っ子らしさを感じるが、確かにシカゴ勢=Drill Music勢の、あのどこか冷酷なトーンで繰り出すラップに通じる部分はありそうだ。2018年7月にリリースされたシングル“Rags To Riches”からもその辺りは感じられ、ユルくメロディアスでありながら随分と冷めた表情のラップを聴かせる。が、それは決して「つまらない」という訳ではなく、夏の終わりに夜風に当たるような、心地良い哀愁を漂わせている。繰り返すがこの落ち着いたフロウで16歳というから恐ろしい。

キャリア・影響を受けたアーティスト等参照: https://www.complex.com/music/2019/06/lil-tecca-interview-ransom
https://www.billboard.com/articles/columns/hip-hop/8516852/lil-tecca-interview-ransom-chief-keef



インタビュー映像などを見ても、イケイケで若さ全開というよりも、知的で内向的な印象を受けるLil Tecca。その辺りは日本人にも親近感が沸くキャラと言えるが、彼のSoundcloudでの居場所には何故か「Japan」とも書かれている(当記事執筆時)。完全に筆者の推測だが、ゲームやアニメなどの日本文化に興味を持っているタイプなのかも知れない。となるとより親近感が沸いてくるが、どちらにせよこれだけ人気急上昇中の存在、今最もチェックしておくべきラッパーと言えるだろう。