Aaliyahの全アルバムを振り返る
- 2019.08.25
- その他

未だ多くのファンを魅了する歌姫Aaliyah。筆者もまた、毎年お盆を過ぎた辺りから彼女のCDを手に取る機会が増す者の一人だ。2001年8月25日に22歳という若さでこの世を去った彼女。生涯に残したアルバムのうち、本国でリリースされなかったもの/日本独自企画盤を除く全ての作品を改めて振り返っていきたい。
14歳でデビューしたAaliyah
New YorkはBrooklynで生まれ、Michigan州Detroitで育ったAaliyah。かなり早い年齢から歌うことを始めたようで、教会でのクワイアへの参加など良くあるレベルに留まらず、10歳にしてオーディション番組に出演するなど、この頃からかなり本格的な活動を視野に入れていたようだ。これはAaliyahの初期のマネージャーも勤めた叔父Barry Hankerson(マネージメント会社を設立しR.Kellyを発掘)と、その妻であるソウルミュージック界の大御所、Gladys Knightの存在が大きく、子供ながらに音楽業界が非常に身近なものであったと推測出来る。実際Aaliyahは、11歳にしてGladysと供にラスベガスのステージに立ち5日間ショウを行うなど、一般的にあまりないであろう経験を早くから積んでいる。
そしてこの叔父HankersonがBlackground Recordsを立ち上げたことと、同レーベルがR.Kellyを通じJive Recordsと契約を結んだことから、世に知られるAaliyahのキャリアがスタートする。
Age Ain’t Nothing But A Number

- “Intro”
- “Throw Your Hands Up”
- “Back & Forth”
- “Age Ain’t Nothing but a Number”
- “Down with the Clique”
- “At Your Best (You Are Love)”
- “No One Knows How to Love Me Quite Like You Do” 【The Honey Drippers – Impeach the President】
- “I’m So into You”
- “Street Thing”
- “Young Nation”
- “Old School”
- “I’m Down”
- “Back & Forth (Mr.Lee & R.Kelly Remix)”
- “The Thing I Like (ボーナストラック)”
※リスト中太字はシングル。【】内は元ネタ。本作は既存曲の替え歌や歌詞の引用などが頻繁に用いられているがそれらは省略し、ブックレット通りの内容のみ記載。またサンプリングと思える曲も、実際はR.Kelly及び制作陣による弾き直しが中心と思われる。
1994年、彼女が14歳(15歳とも言われているが、ここでは公式サイトの情報通りに記載。)でリリースしたデビューアルバム。R.Kellyがプロデュースを務めており、HipHop~New Jack Swingをベースにどこか重たく憂鬱さを含んだサウンドにまとめられている。これはAaliyahのあまりに落ち着いた歌声と、「年齢なんてただの数字よ」というタイトルからも分かる大人びたキャラを前面に出すイメージ戦略、レコーディングが行われたR.Kellyの地元Chicagoの空気感などが入り混じった結果であろうが、この心地良い重苦しさはほぼ全編に渡り漂う。この歌声が当時14歳だったと思うと、今聴いても思わず溜め息が出てしまう。
Back & Forth
彼女のデビュー曲となった”Back & Forth”。本作では少ないアップテンポな曲で、冒頭のTia Hawkinsの煽りとはあまりに温度差のある歌声は既に大物感を感じさせる。
At Your Best (You Are Love)
アルバムリリース後にカットされた2曲目のシングルで、”The Isley Brothers – At Your Best (You Are Love)”を見事にカバー。イントロのアカペラから一瞬で彼女の世界へ引き込まれる。
Age Ain’t Nothing but a Number
その後UKでのみシングルカットされた”Down with the Clique”を挟みリリースされた、アルバムのタイトル曲。ミュージックビデオの撮影は地元Detroitで行われており、エキストラとして参加したD12のメンバー、故ProofとBizarreの若き日の姿も確認出来る。
One in a Million

- “Beats 4 da Streets (Intro)” (feat. Missy Elliott)
- “Hot Like Fire”
- “One in a Million”
- “A Girl Like You” (feat. Treach) 【Kool & the Gang – Summer Madnes [1974年]】
- “If Your Girl Only Knew”
- “Choosey Lover (Old School/New School)”
- “Got to Give It Up” (feat. Slick Rick)
- “4 Page Letter”
- “Everything’s Gonna Be Alright”
- “Giving You More”
- “I Gotcha’ Back”
- “Never Givin’ Up” (feat. Tavarius Polk)
- “Heartbroken” 【Minnie Riperton – Inside My Love [1975年]】
- “Never Comin’ Back”
- “Ladies in da House” (feat. Missy Elliott & Timbaland)
- “The One I Gave My Heart To”
- “Came to Give Love (Outro)” (feat. Timbaland)
- “No Days Go By”(国内盤ボーナストラック)/
“Come Over”(2004年再発盤ボーナストラック)
前作のリリース直後、自身の年齢を18歳と偽りR.Kellyと極秘結婚したAaliyah。(思えば前作のタイトルは、この辺りの思いもあったか?)情報を入手したVibe誌に報じられてしまったことで、彼女の両親や叔父Hankersonもこの事実を知ることとなる。翌年には当然ながら結婚は破棄され、激怒したと言われるHankersonの意向もあってだろう、R.kellyとは引き離されることに。そんな経緯を経て 、Hankersonが契約していたTimbalandとその相棒であったMissy Elliottを制作陣に招いた2作目、「One in a Million」。1996年にリリースされ、前作の欝っぽいサウンドに晴れ間が覗いたような、キャッチーで洗練された楽曲が並ぶ。前作のシングル曲のようなパンチのある曲は少なく感じられるが、これは全編に渡り平均点の高い曲が続くことが要因と言える。肝心のAaliyahの歌声も安定感を増し、既に円熟期を迎えたベテランシンガーのような風格が漂う。
If Your Girl Only Knew
本作のファーストシングル。制作陣が一新したことで慎重にならざるを得なかったのか、前作の流れを汲むような地味めな曲がアルバムに先駆けリリースされた。
One in a Million
本作のタイトル曲。Timbalandにしては手数の少ないビートと、それに乗るAaliyahの囁くような歌声は、”引き算”の美学と言えよう。
4 Page Letter
間延びしそうなスロウな曲も、Timbalandらしいシンコペが良いアクセントに。いかにもMissyと言った感じのメロディーを歌い上げるAaliyah、歌声からも表現力が増したような変化が感じられる。
Hot Like Fire
このビデオでの音源は、同曲シングルのプロモ盤に収録された「Timbaland’s Groove」バージョン。アルバムバージョンである原曲の方は、チキチキとしたバウンス感は控え目にしっとりとしたサウンドとなっている。
The One I Gave My Heart To
正規盤の”Hot Like Fire”のシングルに同時収録されたもので、筆者としては本アルバム中で最も好きな曲。「歳の割りに大人びた」歌声だった彼女が、本当の大人の歌声に近付いてきたような印象を受ける。
Got To Give It Up
Marvin Gayeの同名曲をカバーしたもので、原曲よりテンポを落とし丁寧に歌い上げている。UK及びヨーロッパと日本でのみシングルカットされた曲。
Aaliyah

- “We Need a Resolution” (feat. Timbaland)
- “Loose Rap” (feat. Static)
- “Rock the Boat”
- “More Than a Woman”
- “Never No More”
- “I Care 4 U”
- “Extra Smooth”
- “Read Between the Lines”
- “U Got Nerve”
- “I Refuse”
- “It’s Whatever”
- “I Can Be”
- “Those Were the Days”
- “What If”
- “Messed Up”(US盤) / “Try Again” (インターナショナル盤)
※リマスター盤※
15.”Try Again”
16.”Miss You”
17.”Don’t Know What to Tell ya”
18.”Erica Kane”
前作から5年空け、2001年にリリースされた3作目。生前最後のアルバムが本作だ。この5年の間には映画「Romeo Must Die (2000年公開)」に主演として抜擢されるなど、活動の場を広げた彼女。それでもTimbaland & Magoo、Missy Elliottら近しい存在から、Nas、Ginuwineなどの楽曲に客演として招かれ、本業方面へもしっかりと顔を出していたせいか、本作では所謂ブランク的なものは感じられない。全米アルバムチャートで2位を獲得後一旦順位は後退するも、彼女の死後売り上げが急増、皮肉にも自身初の全米1位を獲得することになった。サウンド面は、前作の大半を手掛けたTimbalandは【1】【4】【6】のみのプロデュースに留まり、Missy Elliottの関与も【6】のみ。その他の楽曲はBlackground Recordsが抱えるプロデューサー陣が手掛けている。
Billboard200順位参照:
https://www.billboard.com/charts/billboard-200/2001-09-15
We Need a Resolution
本作の先行シングルも、一つ前のアルバムの流れを汲む曲が選ばれており、Timbalandがプロデュースしたもの。とは言え当時はTimbalandのサウンドがHipHop/R&Bシーンを巻き込み全盛期だった訳で、その辺りに標準を合わせたとも言えるか。
More Than a Woman
2枚目のシングルもTimbalandが手掛けた曲。サウンドやビデオはすっかりポップスターらしい作風だが、彼女の一歩引いたような歌声は大きな変化は感じられない。このビートと歌声の温度差がたまらない。
Try Again
前述の映画「Romeo Must Die」のサウンドトラックに収録され、先行シングルにもなった曲。アルバム「Aaliyah」にはUSオリジナル盤には収録されておらず、国内盤を含むインターナショナル盤にのみ収録。
Rock the Boat
我々ファンにとって、また恐らくAaliyah自身やその家族にとっても「無ければ良かった」とさえ思えてしまうミュージックビデオ。 バハマ諸島アバコ島にてこのビデオが撮影され、その帰路、搭乗した小型飛行機が墜落。彼女とそのクルー、パイロットに至るまで、9人の搭乗者全員が帰らぬ人となった。
目撃者のひとりは、離陸直後に右側のエンジンが出火したと語っている。バハマの調査当局の発表によると、同機は離陸直後に急降下し墜落、その衝撃によって被害者のほとんどが機外へ投げ出され、何名かは座席に固定されたままの状態であったという
引用元:
https://www.barks.jp/news/?id=52250961
この事故に関しては、「撮影が早く終了した一行が予定より早く帰国を望んだため、当初手配していた機体ではない、より小型の飛行機に搭乗していたこと」「機体が重量オーバーの状態だったこと」「パイロットの遺体から薬物とアルコールが検出されたこと」などが判明している。ビーチに降り注ぐ太陽をバックに佇むAaliyahはどこか神秘的だが、これが生前最後の映像、ということになるだろう。
I Care 4 U

- “Back & Forth“
- “Are You That Somebody“
- “One in a Million“
- “I Care 4 U”
- “More Than a Woman“
- “Don’t Know What to Tell Ya”
- “Try Again“
- “All I Need”
- “Miss You“
- “Don’t Worry”
- “Come Over“
- “Erica Kane”
- “At Your Best (You Are Love)”
- “Got to Give It Up” (Remix)”
- “We Need a Resolution” (feat. Timbaland)(インターナショナル盤ボーナストラック)
- “Rock the Boat” (インターナショナル盤ボーナストラック)
- “Miss You” (enhanced video) (インターナショナル盤ボーナストラック)
※国内盤※
15.”If Your Girl Only Knew“
16.”We Need a Resolution” (feat. Timbaland)
17. “Rock the Boat“
※Disc2(限定盤のみ。ミュージックビデオを収録したDVD)※
1.”One in a Million”
2.”Are You That Somebody”
3.”Try Again”
4.”We Need a Resolution”
5.”More That a Woman”
6.”Come Back in One Piece” (feat. DMX)
7.”4 Page Letter”
8.”Got to Give It Up” (Remix)
9.”Rock the Boat”
10.”Japanimation Commercial”
11.”Aaliyah Behind the Scenes”
12.”Miss You” (国内盤のみ)
前述の飛行機事故で彼女が亡くなった翌年リリースされたアルバム。これまでのアルバムに収録されたヒット曲に加え、ボーナストラックでしか聴けなかったものや、映画「Dr. Dolittle」のサウンドトラックに収録されていた”Are You That Somebody”、他数曲の未発表曲をまとめたベスト盤的な作品だ。
Are You That Somebody
映画「Dr. Dolittle (1998年)」のサウンドトラックに収録され、同時にシングルカットされた曲。プロデュースはやはりTimbaland。
Don’t Know What To Tell Ya
前作のアルバムに向け制作されたようだが収録はされず、本作で日の目を見ることになった曲。ミュージックビデオは当然本人亡き後に作られたため、過去のビデオの総集編のような内容となっている。
Miss You
本作で最も重要な曲と言え、そのタイトルからファンの間でも特に語り継がれる名曲”Miss You”。一説ではこちらも前作の収録から漏れたもののようで、死後作に収録されたことでより重要な意味を併せ持つことになった曲。ビデオには生前親交があったアーティストたちが登場し、彼女に代わり歌い上げる。
彼女の音楽は今も私たちのそばに
Miss Youのビデオの冒頭、DMXが「神様が君を近くに置きたがった」と語りかけるが、それは我々にとっても同じ。8月25日、今宵も彼女のアルバムを手に取り追悼の意を表したい。
※記事中Amazonのリンクを掲載してはいますが、Aaliyahのほとんどのアルバムは現在新品での流通は無いようで、新品価格は高騰しています。入手したい方は中古品を探すのがおすすめです。
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