US産HIPHOPに詳しくなるおすすめの方法 【初心者向け】

US産HIPHOPに詳しくなるおすすめの方法 【初心者向け】
 

最初は何から聴けば良いのか分からない

2018年の初め、アメリカで「1年間で最も消費された音楽ジャンルは”HipHop/R&B” であった」という調査データが発表され話題になりました。これは言い換えれば「全米中で最も人気のある音楽ジャンルになった」ということで、同ジャンルにとっては史上初めてこと。この流れは日本にも飛び火するかと思われたのですが、日本では自国内でのラップブームが起こったタイミングでもあり、本場のHipHopに初めて興味を持つような人々は思った程多くないように感じられます。

音楽市場の調査データ参照: https://www.nielsen.com/us/en/insights/reports/2018/2017-music-us-year-end-report.html


それでも「アメリカのHipHopに興味があるが、何から手を付けたら良いのか分からない」「周りは日本語ラップが好きな人ばかりで、情報を共有できる仲間がいない」というような迷える初心者の人々は一定数存在するはずです。ここではそのような人がHipHopに詳しくなれるちょっとマニアックでおすすめの方法や注意点を、筆者の実体験を元に紹介していきます。初心者でない方にも役立つ方法があるかも知れません。

初心者が本場アメリカのHipHopに詳しくなれるおすすめの方法6選

1. コンピCD「What’s Up HipHop」シリーズを集めよう

ユニバーサルより発売されているHipHop/R&Bのヒット曲を集めたコンピレーションCD「What’s Up HipHop Greatest Hits」シリーズを集める方法です。2枚組みというボリュームで著名なアーティストの人気曲を一度に知ることが出来ます。HipHopは年代や地域によって「これだけは知っておきたい名曲」「クラシック」と言えるような楽曲がたくさんありますが、それらが初心者向けに程良いバランスで選曲されているのがポイント。

またブックレットには各曲の簡単な解説もされています。初心者の方はYoutube等で色々聴いてみても「誰がどうなのか分からない」といった状態に陥り易いので、この解説は重宝します。

同シリーズは2003年から2008年まで計6作発売されていますが、シリーズが進むにつれ単なる売れ線な曲が増えていく印象がありましたので、まずは1~3作目を聴いてみるのがおすすめです。”最新曲”と言える内容ではありませんが、未だに語り継がれる定番曲から抑えてみて欲しいと思います。


情報の信憑性・信頼度メジャーレベルによるコンピなので高め
手軽さ・入手し易さ中古でも比較的容易
コストブックオフ、ヤフオク等で数百円~
マニアックさ低め。メジャー曲、定番曲が多め

2. レコードショップの通販サイトをチェック

YoutubeやSpotify等で楽曲そのものは無数にチェックすることが可能な時代ですが、アーティストや楽曲に関する情報が分からないとなかなかピンと来ませんよね。そこでおすすめなのが、HipHopのレコードを扱うショップの通販サイトで”ウィンドウショッピング”する方法です。

特におすすめなのはHipHop、ソウル、ファンクを専門に扱うレコードショップ。各レコードに「これはどこどこのラッパーで~、○○の元ネタをサンプリングしたフロア爆発の大ヒット曲!」等の説明が書かれていることが多いので、ここから知識を仕入れましょう。

サイト内で視聴も出来るショップならベストですが、商品名(曲名)をひたすらYoutubeで検索していけば楽曲と情報を同時に知ることができますよ。


情報の信憑性・信頼度ざっくりとした情報が多い
手軽さ・入手し易さかなり手軽な方法
コストネット環境さえあれば良い
マニアックさ定番曲以外のものや、元ネタが紹介されていることも多いのでややマニアック

3. 雑誌「bmr」を探せ

1981年から2011年まで発行されていた音楽雑誌「bmr」。「ブラックミュージックリビュー」の頭文字を取った誌名なだけあり国内では唯一と言って良い程、USのHipHop、R&B、Funk、Soulなどを専門に扱う雑誌でした。USラッパーのインタビューや、CDやレコードのレビュー、地域/年代/レーベル毎に掘り下げる特集企画など、知識のあるライターさん達によるマニアックな情報が満載で、コアなHipHopファンにとっては参考書のような存在です。

2011年に雑誌としての発行は終了し以降はWebサイトのみの体制で運営を続けられているようですが、書籍時代の方が基礎から学べる内容が多い印象です。特にインタビュー記事は、この上なく信憑性のある情報源(アーティスト本人が語っていますから)と言え、彼らがどういった環境で育ったのか/どういった人柄なのかという点も感じることが出来ます。現在は古本屋などでしか入手することは出来ないかと思いますが、一度読んでみることをおすすめします。


公式サイト: bmr


情報の信憑性・信頼度アーティストのインタビューは信頼性100点
手軽さ・入手し易さ難しい。古本で探すしかないが、流通量は多くは無い
コスト古本で100円程度~
マニアックさかなりマニアック

4. 映画のサントラCDをゲットしよう

映画のサウンドトラックCDの中には、HipHop色が強い作品があります。こういったサントラは映画公開時に人気のあるラッパーや著名なラッパーが多数起用されることが多いため、HipHopのコンピレーションCDのような役割を果たしてくれます。いくつか例を挙げると、

・「8 Mile」・・・人気ラッパー、エミネム主演の映画「8Mile」のサントラで、彼のレーベル”Shady Records”所属のラッパーから外部のベテランラッパーまで多数参加。特に外部のラッパーは名前を知っておきたい存在ばかりです。

・「More Music From 8 Mile」・・・映画「8Mile」のもう1つのサントラで、こちらは劇中使用された楽曲を集めたもの。舞台である90年代中盤に流行ったコアなHipHopのみが収録されています。

・「ワイルド・スピード アイスブレイク」・・・お馴染みのカーアクション映画シリーズのサントラ。全シリーズHipHop色が濃い内容ではあるものの、本作では現在勢いのある新世代のラッパーが多数参加しています。

等がおすすめです。上記の3タイトルをじっくり聴きラッパーの名前を覚えていくだけで、著名なラッパーをかなりの人数知ることが出来ます。


情報の信憑性・信頼度メジャーレベルによるコンピなので高め
手軽さ・入手し易さ有名な映画であればある程容易
コスト新品、中古共に一般的なCDの価格
マニアックさ意外なラッパーが参加していたりするのでややマニアック

5. NETFLIX ヒップホップ・エボリューションを観る

映画やドキュメンタリー番組等をオンラインで視聴出来る定額サービス「NETFLIX」が配信している番組、「ヒップホップ・エボリューション」。この番組は、HipHop黎明期から全米各地へ飛び火~発展していく様子を当時の関係者や重要人物達にインタビューしながら紐解いていくドキュメンタリーシリーズです。まさにその時代その場所にいた関係者が語っているので信憑性は十分、またHipHop史上の主要な流れが網羅されており、HipHopの歴史を学ぶには現状この上ない方法です。本記事での他の方法で「どんなHipHopアーティストがいるのか」「どんな楽曲があるのか」といった音楽的な部分を学びながらも、こうした文化的な面も抑えて欲しいと思います。

公式サイト: NETFLIX


情報の信憑性・信頼度ラッパーのインタビューも多いので信憑性は100点
手軽さ・入手し易さNETFLIXに登録する必要有り
コスト NETFLIXの利用料金がかかる。月額¥800(税抜)~
マニアックさ歴史・文化的な面に特化

6. HipHopを題材にした映画を観よう

こちらは前述の「ヒップホップ・レボリューション」程史実通りとは言えないでしょうが、HipHopの世界観や彼らが取り巻く環境を視覚的に捉えるのにおすすめです。USのHipHopはラッパー達の身近な環境、経験を元にした歌詞も多いのですが、私達日本人にはイメージ出来ない部分も多いはず。そういった点を分かり易く知るにはおすすめの方法です。

取っ付きやすい作品の例として、サントラの項でも紹介した「8Mile」を挙げておきます。この映画はエミネムが主演を務め、彼の半自伝映画とも言われている作品です。貧しい環境の中HipHopで成功するために主人公が奮闘する姿、アンダーグラウンドな雰囲気のクラブで行われるMCバトルなど、当時のラッパー達を取り巻く環境が垣間見れるような内容になっています。


情報の信憑性・信頼度ノンフィクションが多いが、彼らの環境、ファッション、生活感等は参考になる。
手軽さ・入手し易さ作品によるが、動画配信サービスで観られるものもある。
コスト作品や視聴方法による。
マニアックさややマニアック

ニュースやゴシップもチェックするべきか?

アメリカのHipHop業界も、リリース情報などの音楽的なニュースから、「ラッパーの○○が撃たれた」「△△と□□に交際が発覚した」というようなゴシップ系の話題まで連日絶え間なく報じられています。「HipHopに詳しくなるためにはこういうニュースも欠かさずチェックしないと」と考えがちですが、何を聴けば良いか分からない位の初心者の方であれば、前述のような方法で定番曲や文化としての魅力を知ることの方が大切かと思います。

HipHopサイトやブログの注意点

アメリカのHipHopに関するニュースを知るには、「日本人が運営しているHipHop情報サイト、ブログ、YouTubeチャンネルなどを見る」という手軽な方法があります。しかしこれらを情報源として頼る場合は、「どの程度HipHopに詳しい人物が記事を書いているのか/解説動画を作っているのか」を必ず確認するようにし、その辺りが不明であったり経験が浅いような人物であれば、あまり当てにしない方が無難と言えます。
その理由として、

1.知識が偏りがち

解説する側も初心者である場合、近年話題のアーティストや特定のサウンドばかりを取り上げる傾向が強いように感じます。知識が浅い者が解説したがれば当然そうなるだろうとは思いますが、本来HipHopには様々なサウンドやスタイル・歴史があり、名の知れたアーティストも本当に多いです。HipHopの極々一部分を全体かのように認識してしまうのはもったいないのです。

2. そもそも情報が間違っている。

これは言うまでも無いですが、解説する側の経験が浅ければ浅いほど情報が正確でないケースも増えてきます。アメリカのHipHopメディアが報じた情報を翻訳しているだけならまだ良いですが、そこへ作者の所感や考察が加わると危険度は増します。(※アメリカのメディアが報じたニュースを紹介しているだけのサイトは、英語さえ分かれば誰でも“HipHopに詳しい解説者”を演じられる、とも言えますね。勿論全てがそうとは言いませんが。)

アメリカのHipHopを追い続けてもうじき20年たつ筆者(=当サイト管理人)でも正確な情報に辿り着けなかったり、誤った情報を載せてしまうことが一切無いとは言えません。この文化の奥深さや語る難しさを知っているからこそ、初心者の方は特に情報の信憑性(解説者の信用度)に注意していただきたいのです。

関連記事: 管理人が活用しているHipHop/R&Bサイトはどこ?

HIPHOPは単なる娯楽ではなく”文化”と考えよう

「アメリカのHipHopに興味はあるけど、何から聴いたら良いか分からない」といった初心者の方向けに、おすすめの方法を紹介してきました。どれか一つでも取り入れてみると、知識が一気に深まるはずです。また当サイトのメインコンテンツ週刊新譜る10も活用していただけたらと思います。

そして最後に重要なことを一つ。HipHopが誕生~発展してきた背景には、人種的な問題や貧困などアメリカの社会が抱える問題が関連している部分があります。少し難しい話になってしまいますが、ただの娯楽ではなく、そのような背景を持った文化であるという認識を頭の片隅に置いておくと、一層理解が深まりますよ。