日本語で歌う本場R&B!日米ミックスシンガーUMIの魅力
- 2019.11.03
- Simple 10注目のアーティスト
例えばCypress Hill。The Beatnuts。J-Lo。彼らは英語を主体としながらも、時にもう一つの言語でラップ/シングを聴かせるアーティスト達。様々な人種によって構成されるアメリカであれば、二つ以上の言語を駆使するラッパー/シンガーで溢れていてもおかしくは無いだろうが、こういったアプローチはスペイン語圏にルーツを持つ者達に多く見られる。アメリカ国内では白人に次いで人口が多い人種がヒスパニックであること、またスペイン語が世界的に見ても中国語・英語に次ぐ母語人口数であることを思えば、需要と供給がマッチした自然な現象と言えるだろう。
だからこそフリースタイルの名手である中国系ラッパーJinも、Sphere Of Influenceとの“Yo Yo Ma(2004年)”が「初めて広東語でヴァースを書いた曲」だと言われているし、パレスチナ生まれのラッパーBellyもアラビア語でラップした曲は恐らく一つも無い。こうしたアメリカ国内の事情を思えば、日本に血縁的ルーツを持つ米国人アーティストが日本語のHipHopやR&Bをリリースすることなんてまず考えられなかった。(メディアに登場しないレベルのアンダーグランドなアーティストは除く。)
そんな中で“想定外”とも言える動きを見せているのが、若手Neo-Soul/R&Bシンガー、UMIだ。(読み方は“ユーエムアイ”ではなく“ウミ”。日本語の海が由来で、本名のミドルネームであるUmiをそのまま採用したとのこと。名付けたのは彼女のお母さん。) 今回は彼女のプロフィールや楽曲から、その魅力を紹介していきたい。
2019年10月30日にリリースされたEP「Love Language」に収録され、ミュージックビデオも公開されている“Sukidakara”。曲名だけでなく歌詞の半分以上が日本語で書かれている。Erykah Baduのようなネオソウル感と、日本産シティポップのような優しい耳辺り。これをTrap以降の細かい横乗りのグルーヴに溶け込ませた、何とも心地良いサウンドだ。日本語特有ののっぺりとしたノリが一層夢見心地な世界へ誘うが、それ故途中の英語パートが良いアクセントになっている。全て日本語にしなかったのは言語的な役割だけでなく、サウンド的にも正解と言えるだろう。
ワシントン州シアトルで生まれ、現在はカリフォルニア州ロサンゼルスを拠点に活動する彼女。アフリカ系アメリカ人でギタリストでもある父と、自宅で日本のポップスやジャズなどをよく演奏していたと言う日本人ピアニストの母との間に生まれ、現在20歳。自身で書き上げたBPM早めなディスコ/ファンク曲“Ordinary”のメロもどこか日本のシティポップっぽさが漂い、この辺りが母親から受け継いだセンスなのかも知れない。このミュージックビデオの冒頭では見慣れた日本語表記が映し出され、「アメリカ生まれのアメリカ人でありながら、もう一つのルーツである日本を思う気持ち」の表れだろうか、日本人としては少し嬉しい演出もされている。
出身など参照: https://www.complex.com/pigeons-and-planes/2019/09/umi-balance-healing-interview
https://www.onestowatch.com/blog/meet-umi-the-lo-fi-rb-songstress-capturing-the
4歳の頃から歌や音楽への興味を持ち始めるも家族以外の人前で歌うのは大の苦手だったようで、高校生になりYouTubeやSoundcloudから本格的な活動を開始する。そういった内向きな性格は歌声にも反映されており、2017年のシングル“Friendzone”のような明るくキャッチーな曲でも、歌声そのものはどこか伏せ目がち。このガツガツし過ぎず、かと言って暗く重たい訳でもないサッパリとしたキャラクターも魅力の一つだ。(この“Friendzone”、分かる人には一瞬で分かる声ネタが使われているのも面白い。)
英語の響きを思えば毎回日本語の曲を歌って欲しいとは思えないし、彼女もそこまではしないだろう。それでも“Sukidakara /好きだから”を制作したチャレンジ精神、ルーツである日本を思う気持ちには、多くの日本人が「応援したい」と感じるはず。
Jhené Aikoよりも日本寄りで、Jojiよりも本場的。ありがちな“何となく日本風を取り入れてみました”、的なものでもない。UMIは、アメリカのR&Bを愛する日本人にとって、初めての“ちょうど良い”存在ではなかろうか。
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