「38 Spesh – Never Seen A Man Cry」他、週刊新譜る10(2019/9/25~10/2)

「38 Spesh – Never Seen A Man Cry」他、週刊新譜る10(2019/9/25~10/2)
 

週刊新譜る10 [2019年9月25日~10月2日分]

直近7日間にリリースされたアメリカのHipHop/R&Bの新譜や新作ミュージックビデオの中から、”これだけは抑えておきたい10曲”を厳選して紹介している当サイトのメインコーナー。今回は2019年9月25日から10月2日の間にリリースされたものから選出。

38 Spesh – Never Seen A Man Cry feat. Benny The Butcher & Conway The Machine


ビデオ公開日2019年9月27日
収録タイトル1994 [リリース予定日不明]
元ネタ “Scarface – I Seen a Man Die [1994年]“

New York州Rochesterのラッパー/プロデューサー、38 Speshの新曲ビデオ。HipHop史上重要な作品が多数リリースされた1994年。この年に生まれたクラシックスをリメイクする、というコンセプトの元作られリリースが予定されている新作アルバム「1994」から、同州BuffaloのラッパーBennyとConwayを客演に招いた曲。 元ネタはScarfaceのヒット曲“ I Seen a Man Die”で、あのH-Twon及び当時のRap-A-Lotらしいイナタくユルいサウンドがたまらない名曲。しかしそんな元ネタも主役の手に掛かれば、縦乗り感が増したNYらしいサウンドに変貌を遂げた。

Snowsa – Yank Riddim (Remix) feat. Young M.A.


ビデオ公開日2019年9月29日
収録タイトル
元ネタ

Connecticut州New Havenの女性ラッパー、Snowsa (Snowprah)の新作ミュージックビデオ。2018年にリリースされていたシングル“Yank Riddim”のビートはそのままに、New YorkはBrooklynからYoung M.Aが参加したリミックスバージョン。原曲はかなり変則な構成でやや物足りなさもあったが、Young M.Aがしっかりとヴァースを担当したことでグッと完成度が増した印象を受ける。淡々とした語り口は両者に共通しており、妙に馴染んだ共演と言える。

Snowsaの活動拠点参照: https://www.newhavenindependent.org/index.php/archives/entry/snowprah_winfrey_/

K Camp – Bling Bling


ビデオ公開日2019年9月27日
収録タイトルWayy 2 Kritical [2019年6月21日リリース]
元ネタ

Georgia州Atlantaのラッパー、K Campの新作ミュージックビデオ。言葉数を抑えたラップと、これまでも度々共作してきた地元のプロデューサーBobby Kritical(2Chainz、Lil Wayne、Lil Uzi Vertらのプロデュースでも知られる)による同じく音数の少ないTrapビートが生み出す“抜きのグルーブ”がお見事。いつも通りのK Campと言えばそれまでだが、この芸風は他のTrap勢にはない強烈な個性を放っている。

Tory Lanez – Watch For Your Soul


ビデオ公開日2019年9月27日
収録タイトル
元ネタ”Jaheim – Put That Woman First [2002年]”

カナダ出身のシンガー、Tory Lanezの新作ミュージックビデオ。Jaheimの”Put That Woman First”をサンプリングしたビートに合わせ今は亡き仲間への思いを歌った曲で、Troyの持ち味である哀愁漂うサウンドが楽しめる。このビートは 2018年にリリースされた“Roddy Ricch – Ricch Forever”と同じものが使われており、今回の曲を聴いた当のRoddy RicchはSNS上で「自分の曲の方が良い」といった趣旨のコメントを投稿。これに対しTroyも直接反論する事態となったが、「Roddyのバージョンが好きだったからこのビートを使った」といった説明もあり、ビーフに発展する程では無さそうだ。

CJ Fly – Rudebwoy feat. Joey Bada$$


ビデオ公開日2019年9月27日
収録タイトル
元ネタ

New YorkはBrooklynのラッパー、CJ Flyの新作ミュージックビデオ。彼が所属する地元のクルーPro EraのメンバーでもあるJoey Bada$$を客演に招いた曲。両者共にカリブ諸国にルーツを持つ家系であるためか、ここでは完全にそちら寄りのサウンド。特段カリブ海寄りとは言えないStatik Selektahのビートをこれだけカリブ寄りにしてしまったフロウが素晴らしく、例えばODBやBusta Rhymesのように、ビート主導ではなくラップ主導で強烈な個性を感じさせるタイプの曲と言える。

Wizkhalifa – Shouldn’t Matter feat. YG


音源公開日2019年9月27日
収録タイトル
元ネタ

Pennsylvania州Pittsburghのラッパー、Wizkhalifaの新曲。California州ComptonのラッパーYGを客演に招いた曲。西海岸的とも愛煙家的とも言える独特なユルさが心地良く、SnoopやらButch Cassidyやらあの辺の連中が出て来そうなサウンド。それでも主役のラップにはキレがあり、メリハリの効いた流れが癖になる。

Andre Nickatina – Say Jack feat. The Jacka & Reign


ビデオ公開日2019年9月27日
収録タイトル
元ネタ

California州San Franciscoのラッパー、Andre Nickatinaの新作ミュージックビデオ。同州Pittsburgのラッパーで2015年に凶弾に倒れたThe Jackaに加え、San JoseのラッパーReign(Reign Eterno)を客演に招いた曲。The Jackaのヴァースが既存のものなのか未発表曲なのかは不明だが、生前の彼と度々共演してきた面々が新曲として発表してくれるのは嬉しい。ベイエリアのローカル臭が濃厚なチープなサウンドも良い。

Silento – Loving You


ビデオ公開日2019年9月28日
収録タイトル Fresh Outta High School [2018年8月3日リリース]
元ネタ

Georgia州Atlantaのラッパー、Silentoの新作ミュージックビデオ。2015年にデビューシングル“Watch Me (Whip/Nae Nae)”が全米シングルチャート「Billboard Hot 100」で3位を獲得し大ブームを巻き起こしたこの男。本曲ではあの時ほどの破壊力は感じられないが、その分より洗練された楽曲となっており、彼が登場した当時猛威を振るったNic Nacらのサウンド、その後のTrapブーム、そして最近のアフロポップ人気と、シーンの一連の流れを凝縮したようなサウンドが楽しい。

Billboard Hot 100順位参照: https://www.billboard.com/charts/hot-100/2015-08-08

Mistah F.A.B. – Run It In feat. Flacko Slim


ビデオ公開日2019年9月30日
収録タイトル
元ネタ

California州Oaklandのラッパー、Mistah F.A.B.の新作ミュージックビデオ。詳細な出身地は不明だがベイエリアのラッパーであることは間違い無さそうなFlacko Slimなる男を客演に招いた曲。ビートは、同郷のプロデューサーでベイエリアシーンを支える重要人物The Mekanixが手掛けており、この地らしいサウンドが堪能出来る。野太い声で変幻自在に繰り出す主役のラップも良いが、それ以上にFlacko Slimのサクサクと切り進むフロウが痛快。

Tech N9ne – Green Lit feat. King ISO & MAEZ301


ビデオ公開日2019年9月25日
収録タイトル N9na [2019年4月19日リリース]
元ネタ

Missouri州Kansas Cityのラッパー、Tech N9neの新作ミュージックビデオ。Nebraska州Omaha出身のラッパーKing ISOと、Maryland州Gaithersburg出身のMAEZ301を客演に招いた曲。客演陣はどちらもTech N9neのレーベル「Strange Music」に所属しており、身内で固めたマイクリレーが楽しめる。Em&Jay-Zのあの曲のフレーズも飛び出す主役の安定感あるラップ、キレキレな速射フロウのKing ISO、中毒性の高いコーラスを聴かせるMAEZ301と聴き所も多い良曲。

週刊新譜る10 [2019年9月25日~10月2日分] まとめ

今週は様々なタイプの楽曲を幅広く選出。中でも、収録アルバムのコンセプトからして素晴らしい”38 Spesh – Never Seen A Man Cry feat. Benny The Butcher & Conway The Machine”は、元ネタも重要なクラシックである点も含め見過ごせない曲だった。
また、Snowsa、CJ Flyなど、当サイトではこれまでに取り上げて来なかったアーティストもピックアップ。彼らの楽曲も独特な個性を放っていて興味深かった。

皆さんも気になった曲はあっただろうか?是非新譜のチェックに活用していただきたい。