「Jadakiss – Huntin Season」他、週刊新譜る10(2020/3/11~3/18)

「Jadakiss – Huntin Season」他、週刊新譜る10(2020/3/11~3/18)
 

週刊新譜る10 [2020年3月11日~18日分]

7日間ごとにアメリカのHipHop/R&Bの新譜・新作ミュージックビデオの中から”これだけは抑えておきたい10曲”を厳選し、ランキング形式で紹介している当サイトのメインコーナー。 今回は2020年3月11日から18日の間にリリースされたもので、Simple10がチェックした主要なリリース74曲の中から選出。

10位 Gwalla Boi Slim – Drop It Low


ビデオ公開日2020年3月15日
収録タイトル
元ネタ “Amerie – Why Don’t We Fall in Love [2002年]“

California州のベイエリア(Menlo Park、East Palo Alto近辺と思われる)のラッパー、Gwalla Boi Slimの新作ミュージックビデオ。あのAmerieのヒット曲をヴォーカル入りのままサンプリングしたビートが何より印象的。原曲の持つ雰囲気がスムースなフロウともよく馴染んでいる。ストリッパー満載のビデオも見応えアリ。

9位 Rico Nasty – Lightning  


ビデオ公開日2020年3月17日
収録タイトル
元ネタ

Maryland州Palmer Parkの女性ラッパー、Rico Nastyの新作ミュージックビデオ。まだ荒削りな印象もあるが、ギャングスタでもストリッパーでもない彼女のキャラクターは新鮮だ。“抜き”の強いビートも強烈で、このサウンドは妙に癖になる。

8位 Duke Deuce – Crunk Ain’t Dead MOB feat. Lil Yachty & Turnt Lil Thadd


ビデオ公開日2020年3月15日
収録タイトルMemphis Massacre 2 [2020年2月19日リリース]
元ネタ

Tennessee州Memphisのラッパー、Duke Deuceの新作ミュージックビデオ。“Crunk Ain’t Dead Remix”の別バージョンか?と思いきや、全く違う曲。Quality Controlに所属するレーベルメイトLil Yachtyと、地元MemphisのラッパーTurnt Lil Thadd を客演に招き、全ヴァースで小節の頭に曲名のアルファベットを一つずつ合唱しながら進む。リリックをそのアルファベットに絡めたり絡め無かったりと雑さも気になるが、その雑さも良しと思えるほどのお祭り騒ぎが楽しい。本家の番長がいなくとも十分Crunkしている破壊力抜群のサウンドだ。

7位 Paul Wall & Lil’ Keke – Ridin’ 5


ビデオ公開日2020年3月13日
収録タイトル
元ネタ

Texas州Houstonのラッパー、Paul WallとLil’ Kekeによる新作ミュージックビデオ。Trap感の強いビートでも、独特なユルさが漂うのがやはりHouston勢。このドロドロダラダラしたサウンドと、垢抜けないローカル臭さがたまらない。

6位 Kiana Ledé – Forfeit. feat. Lucky Daye


ビデオ公開日2020年3月12日
収録タイトルKiki [2020年4月3日リリース予定]
元ネタ

Arizona州Phoenix出身のシンガー、Kiana Ledéの新作ミュージックビデオ。リリースを控えるデビューアルバム「Kiki」に収録予定で、Louisiana州New OrleansからLucky Dayeを客演に招いた曲。ブルージーなサウンドと、両者の歌声の相性が抜群。

5位 Joyner Lucas – Lotto


ビデオ公開日2020年3月11日
収録タイトル ADHD [2020年3月27日リリース予定]
元ネタ

Massachusetts州Worcester出身のラッパー、Joyner Lucasの新作ミュージックビデオ。リリースを控えるデビューアルバム「ADHD」から本曲で8本目。さすがに寝かせ過ぎな気もするし、Trapをベースにした本曲も今更感はある。それでも4ヴァースまで聴かせる自信の表れとも取れる内容や、Trap系ラッパーとは明らかに次元の異なるスキルは十分魅力的。アルバムリリースで何が起こるのか、注目したい。

4位 Troy Ave – High School


ビデオ公開日2020年3月13日
収録タイトル
元ネタ

New York市Brooklynのラッパー、Troy Aveの新曲ビデオ。昨年年末に毎年恒例のミックステープシリーズ「White Christmas 7」をリリースしてから、鳴りを潜めていたこの男。“50cent – Wanksta”の一節を引用したと思われるリリックが印象的だが、それを全く別の、それもかなり中毒性のあるフロウで聴かせる。派手さは無いが、彼らしい個性的なサウンドが味わい深い。

3位 Tyga & Megan Thee Stallion – Freak


ビデオ公開日2020年3月13日
収録タイトル
元ネタ “Sexual Harrassment – I Need a Freak [1982年]”

California州Compton出身のラッパーTygaと、Texas州Pearlandの女性ラッパーMegan Thee Stallionによる新作ミュージックビデオ。タイトルやビデオからも分かる通り、リリックでも露骨な描写が含まれるナスティーな曲。内容に反して、主役の淡々とした語り口に釣られたかMeganもやや余所行きモードのフロウを聴かせる。楽曲のプロデュースはDJ Mustardと、Kansas州Wichitaのプロデューサーで主役の“Ayy Macarena”も手掛けていたPliznaya。かつてThe Black Eyed Peasも使った“Sexual Harrassment – I Need a Freak”のリフを弾き直し、いかにもTygaっぽいボトムを敷いたビートも良い。

2位 DJ Kay slay – Living Legend fest. Jadakiss, Queen Latifah & Bun B


ビデオ公開日2020年3月11日
収録タイトルLiving Legend [2020年3月6日リリース]
元ネタ

New York市HarlemのDJ、Kay slayの新作ミュージックビデオ。新作アルバム「Living Legend」のタイトル曲で、既にビデオが公開されている”Growing Up In These Streets”と同様、ベテラン世代のMC達を招集した豪華な曲。各々が自身の功績やシーンにおける“Living Legendぶり”を語る。彼らの功績については今更語るまでもないだろうが、世代間の差が広がる今だからこそ、本当の意味で成功した者たちの言葉は重要だ。本曲で語られる内容は見せ掛けの自慢話では無いし、現行シーンにお灸を据えるような意図も感じられる。彼らに反論出来る者はいないはずだ。

1位 Jadakiss – Huntin Season feat. Pusha T


ビデオ公開日2020年3月12日
収録タイトルIgnatius [2020年3月6日リリース]
元ネタ

New York州Yonkersのラッパー、Jadakissの新作ミュージックビデオ。Virginia州Virginia Beachのラッパーで、兄弟デュオClipseの片割れとしても知られるPusha Tを客演に招いた曲。中身の無いラッパー達に対し「狩りの季節」だと言い放つ内容が痛快。ビデオでも流行りのラッパーを思わせる風貌の者達が狩られた状態で足元に転がる。Jadaらベテラン世代のMC達なら現行シーンへの不満・不信感はあって当然だろうが、説教くさい内容ではなく実力でねじ伏せよう(狩ろう)とする辺りがやはり“本物”。本曲はリリース後自主的に一度削除されていたが、これは(決して暴力を推奨しているものでは無いのだが)内容が内容なだけに時期が重なったPop Smokeの死へ配慮した形だ。ビデオでも最後にPopへの追悼が含まれる。
マイクとスキルを使った“狩り”、今なら獲物は多いはずだ。

週刊新譜る10 [2020年3月11日~18日分] まとめ

今週Simple 10がチェックした主要なリリースは74曲。相変わらずコロナ関連の影響か、著名なアーティストのリリース、或いはそれを伝えるメディアの動きはやや鈍い印象があった。そんな中最も痺れたのは、やはりJadakiss。タレント揃いのNYシーンの中でも実力派MCとして根強い人気を誇るこの男に「狩りの季節」と言われたら、興奮しないはずが無い。

皆さんも気になった曲はあっただろうか?是非新譜のチェックに活用していただきたい。