「Spice 1 – Since 85」他、週刊新譜る10(2019/6/5~6/12)

「Spice 1 – Since 85」他、週刊新譜る10(2019/6/5~6/12)
 

週刊新譜る10 [2019年6月5日~12日分]

直近7日間でリリースされたアメリカのHipHop/R&Bの新譜や新作ミュージックビデオの中から、”これだけは抑えておきたい10曲”を厳選して紹介している当サイトのメインコーナー。今回は2019年6月5日から12日の間にリリースされたものから選出。

Spice 1 – Since 85 feat. Devin The Dude & Kurupt


楽曲公開日2019年6月11日
収録タイトルPlatinum O.G. [2019年7月26日リリース予定]
元ネタ

California州Haywardのベテランラッパー、Spice 1の新曲。その筋の愛好家であればDevin The Dudeの名を見ればおおよそサウンドの予想はつくだろうが、その予想を裏切ることはなく、どこまでもユルくイナタイローカルギャングスタ臭が漂う曲。近年では2015年、2017年とマイペースにアルバムをリリースしてきたSpice 1だが、現在新作のリリースを控えているよう。本曲を聴く限りでは、全く衰えることないベイの大物振りを発揮してくれそうだ。

「Platinum O.G.」 リリース予定日参照:
https://hiphopdx.com/news/id.51716/title.spice-1-preps-platinum-og-with-since-85-single-featuring-devin-the-dude-kurupt#signup

J. Stalin – Paint A Picture feat. Mozzy & Celly Ru


ビデオ公開日2019年6月8日
収録タイトル
元ネタ

California州Oaklandのラッパー、J. Stalinの新作ミュージックビデオ。SacramentoからMozzyとCelly Ruを客演に招き、ベイエリア人脈で固めた曲。哀愁漂うベイ流のファンクサウンドが味わい深く、そこへ乗る三者も熱量を抑え落ち着いた語り口で聴かせる。

Lil Jon & Mac Dre – Ain’t No Tellin


ビデオ公開日2019年6月11日
収録タイトル
元ネタ”Mac Dre- Shady Times [1996年]”、”Mac Dre – Gumbo [1996年]”

ベイエリアの今は亡きレジェンド=California州VallejoのラッパーMac Dreと、Georgia州Atlantaのラッパー/プロデューサーLil Jonの共演曲。と言ってもDreのパートは、彼の2つの既存曲からラップ部分を繋ぎ合わせたもの。そのためLil Jon側(制作にはDawgなるプロデューサーも参加)が西に寄せた印象もあるが、そもそもLil Jonの専売特許である”クランク”と、ベイのご当地HipHop”ハイフィー”の時点でサウンドに共通点もあった訳で、不自然さはあまり無い。相変わらずむさ苦しく雄たけびを上げる番長と、軽やかなフロウのDre、両者の棲み分けも絶妙だ。

Mr Capone-E & Hi Power Soldiers – Real Hi Power G’s


ビデオ公開日2019年6月11日
収録タイトルThe New Brigade: Ready for War [2019年6月13日リリース予定]
元ネタ ”Eazy-E – Real Muthaphuckkin’ G’s feat. B.G. Knocc Out & Dresta [199年]”

California州West CovinaのラッパーMr Capone-Eと、彼が率いる軍団Hi Power Soldiersの新作ミュージックビデオ。筆者の記憶では少し前に公式サイトが大幅にリニューアルされていたHi Power軍団だが、本曲でも見慣れないメンバーばかりが参加しており、何やら新たに動き出そうというタイミングだろうか。Eazy-Eのあの曲を現行西海岸サウンドに仕立て上げ、ビデオではEazyの息子まで登場。そんな曲を、新生軍団のお披露目コンピ1曲目にブチ込んでくる辺りがニクい。

Tom Francis – Lifestyle feat. Snoop Dogg


ビデオ公開日2019年6月6日
収録タイトル
元ネタ

ニュージーランド出身のラッパー、Tom Francisの新作ミュージックビデオ。California州Long Beach出身のベテランSnoop Doggを招いた曲。これまでにも数回Snoopの楽曲を手掛けているKJ Contehによるビートは、Dr.Dreのような音使い。完全にSnoopのサウンドにも関わらず、フックを含め主役の健闘ぶりが素晴らしい。

LocoCity – Palm Trees


ビデオ公開日2019年6月10日
収録タイトル
元ネタ

カナダのラッパー、LocoCityの新作ミュージックビデオ。タイトル通りリゾート感のあるスムースなサウンドで、Trapをベースにしつつもカリブ海的な空気も漂う。個性的なナヨナヨした声も、これだけユルい曲であればプラスの作用をもたらしている。サラりと聴けて、ついリピートしたくなるような曲だ。

Raphael Saadiq – Something Keeps Calling feat. Rob Bacon


ビデオ公開日2019年6月6日
収録タイトルJimmy Lee [2019年8月23日リリース予定]
元ネタ

California州Oakland出身のシンガーで、Tony! Toni! Toné!のメンバーだったことでも知られるRaphael Saadiqの新曲ビデオ。DJ Quik近辺を筆頭にSouth Central CartelやDominoなど、我々にも馴染み深い面々の楽曲に参加してきたギタリスト、Rob Bacon(Robert ”Fonksta” Bacon)を招いた曲。そのため西海岸Gモノ好きであれば、元ネタを聴いているような感覚で楽しめるだろう。メロウなサウンドが気持ちの良い、大人なR&Bだ。

「Jimmy Lee」リリース予定日参照:
https://music.apple.com/us/album/jimmy-lee/1465332884

Conway x Trillmatic – Draco


ビデオ公開日2019年6月10日
収録タイトルTrillmatic Presents Organized Grime [2019年4月18日リリース]
元ネタ

New York州Buffaloのラッパー、Conwayの新作ミュージックビデオ。本曲はMassachusetts州Bostonのアパレルブランド「Trillmatic Goods」主導のコンピレーションに収録されており、同地のプロデューサーMephux(過去にもConwayの楽曲を手掛けている)がビートを手掛ける。Conwayにとってもアウェー感はなく、普段通りの渋く正統派な東海岸サウンドが楽しめる。

Benny The Butcher – ’97 Hov


ビデオ公開日2019年6月12日(Tidalにて。翌13に日You Tubeで公開されたため本記事ではそちらに差し替え)
収録タイトルTana Talk 3 [2018年11月23日リリース]
元ネタ

そんなConwayと同郷で、同じGriselda Recordsに所属するラッパー、Benny The Butcherの新作ミュージックビデオ。自身を97年のJay-Zに例えた本曲は、ビデオもJayの地元Brooklynで撮影する徹底ぶり。全く異なるビート2曲を使い、フックの無いヴァース→スキット(故Pimp Cの音声と思われる)→ヴァースという斬新な構成で進行する。2曲分を詰め込むミュージックビデオはHipHopではしばしば見られるが、本曲は音源の方も同様の構成だ。前半のビートは地元のプロデューサーDaringerが、後半はThe Alchemistが手掛ける。主役のイナタい語り口も相まって、癖になるようなダークな曲。

Jim Jones – My Era feat. Maino & Drama


ビデオ公開日2019年6月7日
収録タイトルEl Capo [2019年5月31日]
元ネタ

New YorkはHarlemのラッパー、Jim Jonesの新作ミュージックビデオ。BrooklynからMainoを、Pennsylvania州PhiladelphiaからDrama(DramaB2R。2000年頃ヒットした南部のラッパーDramaとは別人。)を招いた曲。ビートを手掛けるのは、Jimが所属するクルーDipset関連の楽曲を初期から手掛けてきたプロデューサーデュオThe Heatmakerz。ソウルフルなネタを早回しした完全にDipsetなサウンドは、主役と相性抜群。客演陣もキレキレで、タイプの異なる三者がそれぞれの持ち味を見事に発揮している。

週刊新譜る10 [2019年6月5日~12日分] まとめ

今週は西海岸、特にベイエリア周辺のアーティストに面白い曲が多くその辺りを多めに選出した。中でも重鎮Spice 1による”Since 85 feat. Devin The Dude & Kurupt”は、面子を見ただけでジャケ買い、ならぬジャケ選出したくなった程。時代は進めど、かつてシーンに西高東低をもたらした世代の実力はやはり別格で、現行世代にはないベテランOGたるサウンドを楽しむことが出来た。

皆さんも気になった曲はあっただろうか?是非新譜のチェックに活用していただきたい。