「Kiana Ledé – Bouncin」他、週刊新譜る10(2019/6/12~6/19)

「Kiana Ledé – Bouncin」他、週刊新譜る10(2019/6/12~6/19)
 

週刊新譜る10 [2019年6月12日~19日分]

直近7日間でリリースされたアメリカのHipHop/R&Bの新譜や新作ミュージックビデオの中から、”これだけは抑えておきたい10曲”を厳選して紹介している当サイトのメインコーナー。今回は2019年6月12日から19日の間にリリースされたものから選出。

Kiana Ledé – Bouncin feat. Offset


ビデオ公開日2019年6月13日
収録タイトルMyself – EP [2019年6月7日リリース]
元ネタ

Arizona州Phoenix出身で、現在はL.A.を拠点に活動していると思われる若手シンガー、Kiana Ledéの新作ミュージックビデオ。Georgia州LawrencevilleのラップグループMigosからOffsetを招いた曲。本曲のような西海岸ともTrapとも言い難いただただキャッチーに仕上げたサウンド=現行サウンドの枠に嵌らないタイプの楽曲は、主役のキャラクターに左右されることが多い。が、RihannaとAriana Grandeを掛け合せたような歌声を持つ彼女においては、この独特なサウンドがキュートで愛嬌のある歌声とメロディーをより一層際立たせる。
Offsetも”らしくない”フロウを聴かせ、レーベルやアーティストごとに様々なタイプの楽曲を楽しめた2000年前後のR&B/HipHopを思い起こさせる。

J.Period – See the Light feat. Andra Day & Dead Prez


ビデオ公開日2019年6月14日
収録タイトルThe Rise Up Project [2019年5月24日]
元ネタ

New YorkはBrooklynを拠点に活動するDJ/プロデューサーJ.Periodが主導するコンピレーションアルバム、「The Rise Up Project」からの新作ミュージックビデオ。California州San DiegoのシンガーAndra Dayと、M-1とStic.manからなるベテランラップデュオDead Prezが共演した曲。正統派な東海岸流のビート(制作陣にはDJ Khalilの名も)に、憂いを帯びたAndra Dayの歌声、渋く硬派なラップを聴かせるDead Prezと、ひた向きな音楽性が味わい深い。

Maino – All Again feat. Macy Gray


ビデオ公開日2019年6月15日
収録タイトル
元ネタ

同じくBrooklynから、こちらはラッパーMainoの新作ミュージックビデオ。Ohio州Canton出身のベテランシンガーMacy Grayを客演に招き、従来の彼とは明らかに一線を画すサウンドが印象的。 ”Bad Meets Evil – Lighters”を彷彿とさせるビートは、前回の「週刊新譜る10(2019/6/5~6/12)」に選出した”Jim Jones – My Era feat. Maino & Drama”と同じThe Heatmakerzがプロデュース。彼らの手掛ける楽曲の幅広さにも驚かされる。

Common – HER Love feat. Daniel Caesar


ビデオ公開日2019年6月13日
収録タイトル
元ネタ

Illinois州Chicago出身のラッパー、Commonの新作ミュージックビデオ。HipHopへの思いを綴った彼の代表曲”I Used to Love H.E.R.[1995年]”と、その続編である”The Next Chapter (Still Love H.E.R.)[2013年]”という曲が存在するが、本曲は更にそこへ続く続編として作られたもののようだ。ビートは故J Dillaが手掛けたものだが、Common自身は決して懐古的にはならず現在のHipHopをポジティブに捉える。
西海岸勢を批判した”I Used to Love H.E.R.”が発端となりビーフを繰り広げたIce Cubeとは、2016年に映画/楽曲で共演。既に相応の時間が経過していたとは言え、正式な和解という見方がなされ話題となった。そんな長年の経緯を経て本曲で語られる、「キミ(=HipHop)が抗争の末にNipsey Hussleを教えてくれた」というラインはあまりにも芸術的。

Black Moon – Creep Wit Me


ビデオ公開日2019年6月14日
収録タイトルRise of Da Moon [リリース日未定]
元ネタ

New YorkはBrooklynのベテランラップグループ、Black Moonの新作ミュージックビデオ。2003年にリリースされたアルバム「Total Eclipse」以来、16年振りの再始動ということになるだろうか。コアなNYスタイルを貫いていた彼らが今更現行シーンの後追いなどする訳もなく、マイペースなサウンドを聴かせる。しかしCurren$yやB.E.N.N.Y. The Butcherのような存在を思えば、「周回遅れが気付いたら先頭にいた」ような、ある意味今のシーンに適合したサウンドとも言える。

B.o.B – Ol’ Dirty Bastard


ビデオ公開日2019年6月13日
収録タイトルSouthMatic [2019年6月21日リリース予定]
元ネタ”Ol’ Dirty Bastard – Shimmy Shimmy Ya [1995年]”

Georgia州Decaturのラッパー/シンガー、B.o.Bの新作ミュージックビデオ。故Ol’ Dirty Bastardのあの曲をサンプリングし、原曲のモノマネからWu本隊のフレーズまで飛び出す。O.D.Bの存在感には及ばぬものの、モノマネパートとそうでない部分の棲み分けが上手く、オマージュ作品として十分楽しめる。

Gucci Mane – Backwards feat. Meek Mill


ビデオ公開日2019年6月17日
収録タイトルDelusions of Grandeur [2019年6月21日]
元ネタ

Georgia州Atlantaのラッパー、Gucci Maneの新作ミュージックビデオ。同郷のプロデューサーZaytovenが手掛けるビートに、Pennsylvania州PhiladelphiaのラッパーMeek Millを招いた曲。主役の体型の変化はラップにも影響をもたらしているようで、ダラりとした従来の語り口から若干ではあるがキレが増した印象を受ける。それでもまだまだねちっこいフロウの主役に対し、ハイトーンなMeek Millの存在は良いアクセントに。

Jagged Edge – Closest Thing To Perfect


ビデオ公開日2019年6月12日
収録タイトルA Jagged Love Story [2019年7月15日リリース予定]
元ネタ

同じくAtlantaの、こちらはR&BグループJagged Edgeの新作ミュージックビデオ。彼ららしい、大人で都会的なR&Bを聴かせる。本来であれば胸焼けしそうなコッテリとしたボーカルが乗りがちな曲調に感じられるが、ここではその辺りを抑え目に、しっとりと清涼感を含んだような曲に仕上がっている。

A Jagged Love Storyリリース予定日参照:
http://youknowigotsoul.com/jagged-edge-reveal-upcoming-a-jagged-love-story-album-will-be-a-double-album-exclusive

5th Ward Boyz – In My City feat. Bun B


ビデオ公開日2019年6月18日
収録タイトル
元ネタ

Texas州Houstonの三人組ラップグループ、5th Ward Boyzの新作ミュージックビデオ。メンバーの一人Andre “007” Barnesは不在のようで、代わりにBun Bが客演に招かれている。この地らしいG-Funkを南部流にユルく組み直したようなサウンドが楽しめる。「週刊新譜る10(2019/4/17~24)」に選出したE.S.G.といい、90年代のG-Funkファンにはお馴染みのH-Town勢による新作が聴ける(観られる)のは嬉しい。

Trae Tha Truth – Nipsey 


ビデオ公開日2019年6月14日
収録タイトル
元ネタ

同じくTexas州Houstonのラッパー、Trae Tha Truthの新作ミュージックビデオ。3月31日に凶弾に倒れたNipsey Hussleへ捧げた曲。ただでさえ静かに説得力のあるフロウを聴かせるTraeだが、ここでは感傷的な空気も漂わせる。両者は、2014年の”No N***a Like Me ”と2015年の”Doin’ Me”という曲で少なくとも2度共演しており、またHoustonで行われた追悼集会にはTraeがステージに立つなど(と言うより彼が主催した可能性も)、喪失感の大きさが伺える。
新譜る10でも度々Nipseyへ捧げられた曲を紹介しているが、近年亡くなったラッパーの中でもこれ程追悼曲が続くことは珍しく、シーンにとっていかに重要な人物であったかを改めて感じさせられる。

関連記事: Nipsey Hussleが死去 彼の功績に思いを馳せる【追悼コラム】

週刊新譜る10 [2019年6月12日~19日分] まとめ

今週は、シンガーとラッパーの共演曲を多めに選出した。どの曲も現行シーンの枠に嵌らないサウンドであった点もポイントだが、特に「Kiana Ledé – Bouncin feat. Offset」のキャッチーさは一際個性的で、彼女が放つスター性を強烈に感じられた。

皆さんも気になった曲はあっただろうか?是非新譜のチェックに活用していただきたい。