「Spice 1 – Who You Wanna Be Like」他、週刊新譜る10(2019/6/26~7/3)

「Spice 1 – Who You Wanna Be Like」他、週刊新譜る10(2019/6/26~7/3)
 

週刊新譜る10 [2019年6月26日~7月3日分]

直近7日間でリリースされたアメリカのHipHop/R&Bの新譜や新作ミュージックビデオの中から、”これだけは抑えておきたい10曲”を厳選して紹介している当サイトのメインコーナー。今回は2019年6月26日から7月3日の間にリリースされたものから選出。

Spice 1 – Who You Wanna Be Like feat. Too Short, Yukmouth, Money B, & Kiki Supastar


音源公開日2019年7月1日
収録タイトルPlatinum O.G. [2019年7月26日リリース予定]
元ネタ

California州Haywardのベテランラッパー、Spice 1の新曲。「週刊新譜る10(2019/6/5~6/12)」に選出した”Since 85 feat. Devin The Dude & Kurupt”と同様、リリースを控える新作アルバム「Platinum O.G.」からの先行カット。当コーナーでは度々登場しているToo Short、ラップデュオLunizの片割れで自身名義でない曲でのベテランクラスとの共演は久々と思われるYukmouth、2Pacが初期に所属していたグループ Digital Undergroundのメンバーだったことでも知られるMoney B、と客演に招いたラッパーは全員Oaklandの大御所たち。スムースなビートに合わせ、全員が肩の力を抜き落ち着いたフロウを聴かせる。筆者の調査では全く情報が出てこなかったKiki Supastarなる女性シンガーの歌声も素晴らしく、ベイ好き、ローカルギャングスタラップ好きにはたまらない曲。

Slick Rick – Can’t Dance To A Track That Ain’t Got No Soul/Midas Touch


ビデオ公開日2019年6月28日
収録タイトル
元ネタ”Funkadelic – (Not Just) Knee Deep [1979年] ” / ” Lyn Collins – Think (About It) [1972年]”

New YorkはBronxのラッパーで、オールドスクール期を代表する存在の一人Slick Rickの新作ミュージックビデオ。こちらは2つの新曲を一本にまとめたもので、デビューから31年目を迎えた彼の健在ぶりが嬉しい。両曲とも定番ネタをサンプリングし、あの時代のレジェンドらしいサウンドを聴かせる。彼のようなラッパーであればもはや時代遅れなサウンドうんぬんは関係なく、古典芸術を嗜む感覚でチェックしていただきたい。

Fat Joe, Dre & Lil Wayne – Pullin


ビデオ公開日2019年6月27日
収録タイトルFamily Ties [リリース予定日不明]
元ネタ”Marvin Gaye – Let’s Get It On [1973年]”

New YorkはBronx出身のラッパーFat Joeと、Florida州MiamiのプロデューサーデュオCool&Dreの片割れDreによる新曲ビデオ。本曲は、2018年からリリースに向け動いている両者のコラボアルバム「Family Ties」に収録されると思われ、裏方のイメージが強いDreもラップを披露。東寄りなサウンドでありながら、突如”Marvin Gaye – Let’s Get It On”に切り替わるコーラス、アウトロでTrap気味に変化するビートなど斬新な展開が楽しめる。客演に招かれたLouisiana州New OrleansのラッパーLil WayneもこれほどNY寄りなビートでラップするのは珍しく、新鮮な印象を受ける。

Jeezy – 1 Time


ビデオ公開日2019年7月2日
収録タイトル
元ネタ”Jay-Z – Stick 2 the Script feat. Beanie Sigel [2000年]” (Nick Ingman – Under Pressure [1976年])

南部勢が東のビートに乗った曲をもう一つ。Georgia州Atlantaのラッパー、Jeezyの新曲ビデオ。彼はTrap発祥地のラッパーとは言え本来の”MCらしい”フロウを聴かせるタイプな訳で、Just Blaze製のNYサウンドをほぼまんま使いしても全く違和感は無い。相変わらずな男気溢れるラップに痺れる。

The Colleagues – C4 feat. Devvon Terrell


ビデオ公開日2019年7月1日
収録タイトルAnother Love Story [2019年8月1日リリース予定]
元ネタ

Florida州Orlandoと、Georgia州Atlantaを拠点に活動するプロデューサーデュオThe Colleaguesの新曲ビデオ。New YorkはBrooklynの若手シンガーDevvon Terrellをヴォーカルに招いた曲。どこかレトロな空気を漂わせるサウンドと、伸び伸びとした主役の歌声が味わい深い。プレイリストに加えておけば、これからの季節大いに活躍してくれそうだ。

「Another Love Story」リリース予定日参照:
https://ratedrnb.com/2019/07/the-colleagues-and-devvon-terrell-release-new-track-c4/

A Boogie Wit Da Hoodie – Swervin


ビデオ公開日2019年7月2日
収録タイトルHoodie SZN [2018年12月21日リリース]
元ネタ

New YorkはBronxのラッパー、A Boogie Wit Da Hoodieの新作ミュージックビデオ。2018年12月にリリースされた作目のアルバム「Hoodie SZN」に収録されていた曲だが、今回のビデオでは客演に招かれていた6ix9ineのパートは全てカットされている。ビートを手掛けているのは、Atlanta出身で数々のメジャー仕事をこなすプロデューサーLondon on da Track。あまり癖のないTrapビートは主役の軽めな語り口と相性が良く、サラっと聴き終えてしまうが、これがかえってリピートしたくなるような中毒性を感じさせる。

Don Q – Karma


ビデオ公開日2019年6月30日
収録タイトル
元ネタ

前述のA Boogie Wit Da Hoodieと盟友でもある、こちらもNew YorkはBronxのラッパーDon Qの新作ミュージックビデオ。彼の出世曲である”Look At Me Now”を手掛けたNew Jersey州Jersey CityのDLo Beatz(ベイエリアのラッパー/プロデューサー、D-Loとは別人)が今回もビートをプロデュース。 怪しげなビートと、イナタくダークなラップが醸し出す不穏な空気がたまらない。

Chris Rivers – Sincerely Me (Official Big Pun Tribute)


ビデオ公開日2019年7月1日
収録タイトルG.I.T.U. (Greatest In The Universe) [2019年8月16日リリース予定]
元ネタ

こちらもNew YorkはBronx出身で、あの故Big Punの息子であることでも知られるラッパーChris Riversの新作ミュージックビデオ。タイトルにもある通り父への思いを綴った曲。今年はPunの命日に合わせ、Fat Joeらが彼の既存ヴァースを使った新曲”Fire”(「週刊新譜る10(2019/2/7~2/13)」で選出)を公開したが、息子による追悼曲となると、また違った思いを感じることが出来る。
しかし、そういったPunに関する要素抜きにしても、独特なメロディアスさとキレを備えたChris のラップはなかなかで、Punが亡くなった年齢に近付いている彼が今後どのようなキャリアを築いていくのか注目したい。

「G.I.T.U.」リリース予定日参照:
https://www.youtube.com/watch?v=T5xzb1nWGaw

Berner x Curren$y – Gangsta S**t feat. Kokane & G Perico


音源公開日2019年7月2日
収録タイトルPheno Grigio [2019年7月8日リリース予定]
元ネタ

California州San Francisco出身のラッパーBernerと、Louisiana州New OrleansのラッパーCurren$yが共演した新曲。本曲は間も無くリリースされる両者のコラボアルバム「Pheno Grigio」からの先行カットで、西モノ好きにはお馴染みのシンガーKokaneに加え、South Los AngelesのラッパーG Pericoを客演に招いた曲。更にこの直進性のあるG-FunkなビートはDaz Dillingerがプロデュースと、もはや誰が主役か分からない状態に。DPG以外のイマドキなラッパー達によるDPG流な曲ということで、妙な面白さがある。

「Pheno Grigio 」リリース日参照:
https://music.apple.com/jp/album/pheno-grigio/1471034798

Doe Boy – Cash App feat. Key Glock


ビデオ公開日2019年7月1日
収録タイトル
元ネタ

Ohio州Clevelandのラッパー、Doe Boyの新作ミュージックビデオ。Tennessee州Memphisのラッパーで、”~シーンの大きな変化を感じた1年を振り返る~ Playlist:「The Best of 2018」”にも選出したKey Glockを客演に迎えた曲。ビートを手掛けるのもMemphisのプロデューサーTay Keithということで 、この地らしいダークなサウンドが楽しめる。主役にとってはアウェーとも言える状態だが、彼のややダラりとした語り口はMemphis勢とも相性が良く、意外にも違和感無くまとまっている。

週刊新譜る10 [2019年6月26日~7月3日分] まとめ

今週は、ベテランから中堅クラスのラッパーを多めに選出した。中でも”Spice 1 – Who You Wanna Be Like feat. Too Short, Yukmouth, Money B, & Kiki Supastar”は、豪華なメンツ/スムースなベイエリアサウンドが文句無しに素晴らしかった。今月リリースされる彼の新作アルバムにも期待が高まる一方だ。
他にもSlick Rickの嬉しい新作ビデオや、Marvin GayeをサンプリングしたFat Joe&Dreなど興味深い曲も多かったが(また、今週はBronx勢が多くなってしまったが)、それ以外にも良曲のリリースが多く、選考にはかなり苦慮した。数年前のようなアトランタ勢ばかり/Trapばかりと言ったシーンに比べると、より面白い時期を迎えている証拠と言えるのかも知れない。

皆さんも気になった曲はあっただろうか?是非新譜のチェックに活用していただきたい。