「Project Pat – CheezNDope 」他、週刊新譜る10（2019/7/10~7/17）

週刊新譜る10 [2019年7月10日～7月17日分]

直近7日間でリリースされたアメリカのHipHop/R&Bの新譜や新作ミュージックビデオの中から、”これだけは抑えておきたい10曲”を厳選して紹介している当サイトのメインコーナー。今回は2019年7月10日から17日の間にリリースされたものから選出。

Project Pat – CheezNDope feat. Young Dolph & Key Glock

Tennessee州Memphisのラッパーで、Juicy Jの実兄でもあるProject Patの新曲ビデオ。2001年にリリースされた自身の曲”Cheese and Dope”を現代版にリメイクしたもので、同郷のYoung DolphとKey Glockを招いた、メンフィス好きにはたまらない曲。ビートはAtlantaのプロデューサー軍団808 MafiaからYK808が手掛けており、2016年にリリースされたミックステープ「Street God 3」で半数近い曲を手掛けていた人物なだけに、今回も相性の良さを感じさせる。リリースラッシュが続いた数年前に比べるとだいぶペースが落ち着いた最近のProject Patだが、本曲でも近年の作品と同路線のサウンドが楽しめる。

尚原曲が収録されたアルバム「Mista Don’t Play: Everythangs Workin」は、全米アルバムチャートBillboard 200にて最高4位を獲得した名盤。数年前より無料公開されているので、未入手の方はこの機会にダウンロードしてみては？

「Mista Don’t Play: Everythangs Workin」Billboard 200での順位参照:
https://www.billboard.com/charts/billboard-200/2001-03-17

50 Cent – Big Rich Town REMIX feat. Trey Songz & A Boogie Wit Da Hoodie

New YorkはQueens出身のラッパー、50 Centの新曲ビデオ。本曲は、2014年からシリーズが開始されたTVドラマ「Power (50も出演)」のサウンドトラックに収録された”Big Rich Town feat. Joe”のリミックスで、2019年8月に新シーズンが公開されることから作られたものと思われる。原曲からは部分的なリリックの引用を除き、ビートも客演陣も変更されより強力な一曲に。主役の相変わらずなダークな語り口、Trey Songzの伸びやかな歌声、Boogieの予測不可能なフロウと、三者それぞれ存在感を放っている。

Joyner Lucas – 10 Bands (ADHD) feat. Timbaland

Massachusetts州Worcester出身のラッパー/シンガー、Joyner Lucasの新作ミュージックビデオ。やはり注目したいのは、楽曲を手掛けるVirginia州NorfolkのプロデューサーTimbalandの存在。かつて個性的なビートで一世を風靡した男なだけに、現行シーンのTrapを上手く取り入れつつも彼らしいチキチキチャカポコしたサウンドを聴かせる。ビートが忙しない分、サクサクと軽めに進む主役のラップも上手くハマっている。

Nas – Jarreau of Rap (Skatt Attack) feat. Al Jarreau & Keyon Harrold

New YorkはQueensのラッパー、Nasの新曲ビデオ。グラミー受賞暦もあるジャズシンガー故Al Jarreauの”(Round, Round, Round) Blue Rondo à la Turk”をサンプリングし、”Jay-Z – Roc Boys (And the Winner Is)”や”Beyoncé – Déjà Vu”への参加でも知られるトランペッターKeyon Harroldを招いた曲（曲中のAl Jarreauのヴォーカルについては元ネタからの流用と推測。）。近年のEminemのような主役のフロウも強烈で、現行シーンに溢れる楽曲とは明らかに一線を画すベテランらしさを感じられる。

PJ Morton – Say So feat. JoJo

Louisiana州New Orleansのシンガー、PJ Mortonの新作ミュージックビデオ。Vermont州Brattleboro出身のシンガーJoJoを客演に招いた曲。コッテリとソウルフルな歌声の主役、安定感はありつつも繊細な歌声のJoJoと、両者のハーモニーは絶妙で、ズルズルとその世界に引き込まれる。主役を奪い合うかのような掛け合いは圧巻。

Eve – Reload feat. Konshens

Pennsylvania州Philadelphia出身のラッパー、Eveの新曲ビデオ。ジャマイカのダンスホールアーティストKonshensを客演に招いた、自身名義の楽曲としては恐らく2013年以来となるシングル。2010年代に入ってからだろうか、現行サウンドとは一味違ったサウンドを聴かせていた彼女だが、本曲もその流れを汲んでいるようにも感じられる。レゲエ寄りのフロウでコーラスを歌う彼女からはかなり新鮮な印象を受ける。

Ice T – Feds In My Rearview

New Jersey州Newark出身で、ギャングスタラップの礎を築いたベテランラッパー、Ice Tの新作ミュージックビデオ。週刊新譜る10（2019/6/26~7/3）にてSlick Rickを選出した際にも同様のことを書いたが、このクラスの存在となると、楽曲どうこう以上に未だに現役としての姿を見せてくれることが何よりも嬉しい。既に還暦を越えたIce-T、小細工無しのほぼドラムメインのビートで勝負してくるその姿勢も素晴らしい。

Fetty Wap – Birthday feat. Monty

New Jersey州Patersonのラッパー、Fetty Wapの新作ミュージックビデオ。同郷のラッパーで、同じクルーZoo Gang/Remy Boyzの一員でもあるMontyを客演に招いた曲。一時期ほどの勢いは感じられなくなったFetty Wapではあるが、本曲での中毒性の高いコーラスを聴けば改めて彼のポテンシャルを感じることが出来る。

French Montana – Wiggle It feat. City Girls

New YorkはSouth Bronxのラッパー、French Montanaの新作ミュージックビデオ。Florida州MiamiのラップデュオCity GirlsからYung Miami（もう一人のJTは2020年3月まで服役中）を招いた曲。以前同じくMiamiのラッパーPitbullも使った ” Nightcrawlers – Push the Feeling on (The Dub of Doom) ”をサンプリングし、スピード感あるサウンドに仕上がっている。このキャッチーさは癖になる。

Kash Doll – Ready Set feat. Big Sean

Michigan州Detroitの女性ラッパーで、”～シーンの大きな変化を感じた1年を振り返る～　Playlist:「The Best of 2018」”では2曲選出したKash Dollの新曲ビデオ。同郷のラッパーBig Seanを客演に招き、両者ともにあっさり目のフロウを聴かせる。ビートを手掛けているのは、Lil Nas XやJuice WRLDのプロデュースで知られるNew YorkのTake A Daytrip。シンプルなビートながら不思議な浮遊感が病み付きに。

週刊新譜る10 [2019年7月10日～17日分] まとめ

今週は、長年のHipHopファンにはお馴染みのメジャー・ベテラン勢のリリースが多く、それらを中心に選出した。特に良かったのは、2001年の楽曲をリメイクした”Project Pat – CheezNDope feat. Young Dolph & Key Glock”。地元勢で固めた客演・808 Mafiaプロデュース、と近年のメンフィスの動きを象徴するような曲であり、Project Patのあのネチっこいサウンドが好きな筆者にとってはたまらなかった。
他にもTimbaland、50Cent、Nas、Eve、Ice-Tと、「最近のアーティストはちょっと・・・」という方にもおすすめしたい曲が多い週だった

皆さんも気になった曲はあっただろうか？是非新譜のチェックに活用していただきたい。