「Big Boi & Sleepy Brown – Intentions」他、週刊新譜る10（2019/9/11~9/18）

週刊新譜る10 [2019年9月11日～18日分]

直近7日間にリリースされたアメリカのHipHop/R&Bの新譜や新作ミュージックビデオの中から、”これだけは抑えておきたい10曲”を厳選して紹介している当サイトのメインコーナー。今回は2019年9月11日から18日の間にリリースされたものから選出。

Big Boi & Sleepy Brown – Intentions feat. CeeLo Green

Georgia州AtlantaのラップデュオOutkastの片割れBig Boiと、同州Savannahのシンガー/プロデューサーSleepy Brownの新作ミュージックビデオ。2020年にリリースが予定されている両者のコラボアルバム「Big Sleepover」からの先行シングルで、同じくAtlantaのシンガーCeeLo Greenを客演に招いた曲。意表を突くレトロなFunkサウンドで、例えばBruno Marsのような世代による同系統の楽曲よりも、ぐっと大人な空気を漂わせる。Big BoiとSleepy Brownは付き合いも長く、Outkastのデビューアルバム「Southernplayalisticadillacmuzik (1994年)」の時点から共闘してきているだけに、安心して聴ける組み合わせと言える。

収録予定のアルバム参照: https://www.rollingstone.com/music/music-news/big-boi-sleepy-brown-ceelo-green-intentions-883921/

Raphael Saadiq – So Ready

California州Oakland出身のシンガー、Raphael Saadiqの新作ミュージックビデオ。こちらも都会的で大人なFunk曲。彼らしい手慣れたヴォーカルも見事で、流行り廃りに左右されなそうな楽曲に仕上がっている。

Swae Lee – Sextasy

Mississippi州Tupeloのシンガー/ラッパーで、兄弟デュオRae Sremmurdのメンバーとしても知られるSwae Leeの新作ミュージックビデオ。本曲は、彼が所属するレーベル「Ear Drummer Records」のボスMike Will Made Itと、”～各地で進化を続けるTrapに夢中になった1年～Playlist:「The Best of 2016」“にも選出した“Lil Durk – Rich Forever”などのプロデュースで知られるChopsquadDJが手掛け、程良い気だるさと浮遊感が心地良い。歌声の安定感も以前よりかなり増したように感じられ、ここ最近の彼は一皮剥けた印象を受ける。

T.I. – You (Be There) feat. Teyana Taylor

Georgia州Atlantaのラッパー、T.I.の新作ミュージックビデオ。2018年にリリースされたアルバム「Dime Trap」から、”You”と”Be There”の2曲分をまとめた短編映像で、同州の性犯罪に焦点を当てた内容となっている。ここ4、5年前辺りからAtlanta勢の活躍が凄まじかったが、やはりT.I.は“（Atlantaのストリート文化であった）Trapを（現在に通じるHipHopのサブジャンル的な意味合いの）Trapとして世に提示した”男（※1）なだけに、その存在は別格だ。

※1　「T.I.がTrapを作った」という説は以前からその真偽に議論が起こっているが、筆者としては彼のデビューアルバム「Trap Muzik (2003年)」が、“Trapを明確な音楽ジャンルとして確立しようとする最初期の動き”であったことから、そういった意味では十分支持出来るものと考える。

A Boogie Wit Da Hoodie – Mood Swings

New YorkはBronxのラッパー、A Boogie Wit Da Hoodieの新作ミュージックビデオ。AtlantaのプロデューサーWheezyによるTrapビートを、彼らしい変化自在なフロウで乗りこなす。今回初めてミュージックビデオの指揮も自身が行ったようで、名実共に着実にキャリアを築いている印象も受ける。

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Luniz – Out Of Control

YukmouthとNumskullからなるCalifornia州OaklandのラップデュオLunizの新作ミュージックビデオ。しばらくの間互いにソロとして活動していたが、近年は完全に再始動モードの彼ら。パシャパシャしたベイエリアらしいビート上で、渋く手堅いラップを聴かせる。本曲のようなチープなベイサウンドに乗るYukmouthは近年のソロ作ではあまり無かったため、そういった違いも楽しめる。

LNDN DRGS – Sideshow feat. Conway

California州Compton出身のラッパーJay Worthyと、カナダ出身のプロデューサーSean HouseからなるデュオLNDN DRGSの新作ミュージックビデオ。New York州BuffaloのラッパーConwayを客演に招いた曲で、一見意外な組み合わせにも思えるが、サンプリング主体で哀愁を纏ったSean HouseのビートはConwayの諸楽曲にも通じる部分があり、違和感無くまとまっている。このユルくありながら、どこか苦味も感じるサウンドは癖になる。

Redman – Black Man In America feat. Pressure

New Jersey州Newark出身のラッパー、Redmanの新作ミュージックビデオ。“Funk Doctor”という異名の通り、本曲でもゴリゴリのFunkサウンドが痛快。コーラスに招かれた、カリブ海はヴァージン諸島出身のReggaeシンガーPressureの存在感も強烈で、聴いているだけで体温と心拍数が上がってくるような曲。

Yella Beezy – Hittas feat. NLE Choppa

Texas州Dallasのラッパー、Yella Beezyの新作ミュージックビデオ。Tennessee州MemphisのNLE Choppaを客演に招いた曲。フレッシュで荒削りなNLE Choppaと、その散らかった後を整えていくように器用なフロウを聴かせる主役。更にその双方が映えるようなCashMoneyAPによるシンプルなTrapビートと、無駄なくピースが揃う。下手ウマなコーラスも中毒性高し。

SiR – That’s Why I Love You feat. Sabrina Claudio

California州Inglewoodのシンガーで、Kendrick Lamarらと同じTop Dawg Entertainment（TDE）に所属するSiRの新作ミュージックビデオ。Florida州MiamiのシンガーSabrina Claudioを客演に招いた曲。妖しくゆったりとしたサウンドが味わい深い。そのユルさは一歩間違えれば間延びしそうな程だが、あまりにも色っぽい歌声を聴かせるSabrinaが抜群のアクセントに。

週刊新譜る10 [2019年9月11日～18日分] まとめ

今週は歌モノを多めに選出した。中でも良かったのは”Big Boi & Sleepy Brown – Intentions feat. CeeLo Green”で、現行シーンにおいては意図的に探さないと出会えないような大人なFunkサウンドが嬉しい曲だった。
HipHop勢では特に”Redman – Black Man In America feat. Pressure”の破壊力が凄まじく、歌モノのFunkとは別の意味で濃厚なFunkさが楽しめた。

皆さんも気になった曲はあっただろうか？是非新譜のチェックに活用していただきたい。